300B/VT52 シングル直結アンプ
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プロローグ

「古典球シングル直結アンプの実験」を行った結果、300Bでもその性能をフルに引き出そうとしなければ、大がかりなアンプにならないことが分かった。
また、フィラメント電圧を変更すれば、同じ回路定数のままでVT52に挿し換えられることも分かった。

300BもVT52も動作点をプレート電圧200V、プレート電流30mAに設定するとバイアスが-40V程度となる。
-40Vのバイアスであれば余裕はないが、実験で使用した6AQ8との2段直結でなんとかなりそうである。

そんなわけで300B/VT52のコンパチブル・アンプを製作してみる。
出力は300Bでも1.5W程度、VT52では1W程度と非常に慎ましいアンプである。

写真左の300Bは20年前に購入した中国製ノーブランド、写真右のVT52はHytron製である。

VT52は民生用のナンバーがなく、ネットで探しても特性図を見つけられないが、「VT52.com」にまとまったデータがある。

回路

基本的には「古典球シングル直結アンプの実験」で使用したものと同じであるが、フィラメント電圧を切り替えるためにフィラメント用整流回路の抵抗を短絡するスイッチを設けてある。
フィラメントはAC6.3Vをブリッジ整流してDC点火するが、そのままでは300B用の5Vには高すぎてしまう。
1オーム程度の抵抗を挿入して5Vまでドロップさせているが、その抵抗を短絡することにより、VT52用の7Vを得ることにした。
ただし、AC6.3Vをブリッジ整流した場合、DC7Vが得られず、せいぜいDC6.3Vである。
実はVT52のフィラメント電圧にも諸説があって、「VT52.com」によるとフィラメントの形状が「VV filament types are 6.3V」、「VVV filament types are 7V」と記述されている。
手持ちのVT52はHytron、フィラメントの形状が「VV」であるのでDC6.3VでOKとなる。

「古典球シングル直結アンプの実験」ではNFBは4dBほど掛けたが、今回は少なめの3dB弱とした。

出力トランスには春日のKA5730を使用した。このトランスは実験でも使用したが、重畳できるDC電流は30mAまでである。
今回、定電流回路によりプレート電流を30mAに規制しているので、目一杯の使い方となる。

電源トランスであるが、B電源は出力段が30mA*2=60mA、前段には2.5mA*2=5mA、計65mA必要となり、フィラメントをDC点火するので、6.3Vの巻線が2組、前段の6AQ8に1組、計3組必要となる。
ノグチトランスのPMC-100Mがこの条件に合うので使用した。

構成

シャーシーはリードのPS-111(W280*D180*H70mm)を使用し、木製サイド・パネルで補強してある。トランスが小ぶりなので300Bの大きさが目立つ。

前段と直結にするためフィラメント回路にかさ上げ用の抵抗が入っている。
片チャンネルあたり、この抵抗には30mAが流れ、4.05Wを消費するので、トータルで30Wのワッテージとしている。

特性(NFB=0dB)

NFBを掛けない状態で計測してみる。



300Bの方が感度が高く、ノンクリップ出力は1.4W、DF=3.5であった。

VT52は0.9W、DF=2.6となった。

300Bの周波数特性である。
各出力における-3dBの範囲は
0.125W:10Hz-40kHz
0.5W:15Hz-40kHz
1W:20Hz-40kHz
となった。
出力が増大すると低域のレスポンスが低下するが高域は変化がない。

100kHzに出力トランスのアバレによるピークがある。

VT52の周波数特性である。
各出力における-3dBの範囲は
0.125W:10Hz-50kHz
0.5W:15Hz-50kHz
1W:20Hz-50kHz
となった。
ノンクリップ出力が0.9Wなので、1W時の特性は参考であるが、300Bと比較すると各出力時とも低域は同じであるが、高域は50kHzまで伸びている。

アバレによるピークが400kHzとなっている。

300Bの歪率特性である。
1kHz5%時の出力は1.5Wとなった。

VT52の歪率特性である。
1kHz5%時の出力は1.1Wとなった。
歪率の傾向は300Bと似ている。

特性その2(300B:NFB=2.9dB VT52:NFB=2.5dB)

NFBを掛けて計測してみる。
NFB用抵抗は620オームとしたが、300BではNFB=2.9dB、VT52ではNFB=2.5dBとなった。

300B、VT52ともノンクリップ出力は変わらず、DFは300BがDF=5.3、VT52がDF=3.5となった。

300Bの周波数特性である。
各出力における-3dBの範囲は
0.125W:10Hz-60kHz
0.5W:15Hz-60kHz
1W:20Hz-55kHz
となり、高域側がワイドとなった。
出力トランスのアバレによるピークが100kHz付近から400kHzへ移動した。

VT52の周波数特性である。
各出力における-3dBの範囲は
0.125W:10Hz-70kHz
0.5W:15Hz-65kHz
1W:20Hz-50kHz
となり、高域側が更に伸びている。
アバレによるピークはNON NFB時と同じ400kHzとなっている。

300Bの歪率特性である。
NFBを掛けたことにより、若干ではあるが改善されている。

VT52の歪率特性である。
NFBによる効果がかなり出ている。

出力0.5Wで測定した300Bのクロストーク特性である。
Rch:1.3mV、Lch:0.38mVの残留雑音があり、そのためL→R特性が悪化している。
しかし、20Hz-10kHzで60dB弱が確保できている。

出力0.5Wで測定したVT52のクロストーク特性である。
残留雑音はRch:1.0mV、Lch:0.8mVとなっている。
20Hz-20kHzで60dB弱が確保できている。

エピローグ

知人宅にアンプと球を持ち込み、試聴してもらった。
最初は300Bである。自宅スピーカーでは分からなかったが、知人のダイヤトーン・スタジオモニターで聞くと、音のクリアーさが足りず、もやもやとした感じがある。
次はVT52である。そうすると300Bのもやもやした感じがなくなり、クリアーな音になり、知人の評価も「これならば問題なし」であった。

やはり、300Bはもっと電流を流す必要がありそうである。そうするとプレート電圧を高くすることになり、結果的にバイアスも深くなり、6AQ8 1段だけでドライブすることもできなくなる。
VT52は動作例にもある220V29mAに近いせいもあり、ある意味まともな動作になったものと思われる。
ただし、300Bも測定結果は、筆者が今までに製作したアンプと比べても優秀な部類であるので、アンプの自作は本当に奥が深い。

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Last Update 9/Sep/2011 by mac