45/VT-52 シングル直結アンプ
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プロローグ

友人から古い自作アンプを貰った。
このアンプ、6GA4シングルで少なくとも30年以上も前のタンゴのトランスが使用されている。
このアンプをベースにしていたずらしてみたが、 出力トランス H-5S の性能が良さそうなので、H-5Sを使用したアンプを製作してみる。

構成は、直結シングルで出力管は45とした。
実は45シングルのアンプはすでにあるが、大きく、重いのでもう少しコンパクトなものを製作してみる。
ただし、スクラッチから製作するとアンプが1台増えてしまうので、使用頻度の少ない6FM7差動PP直結アンプを改造することにした。

回路

45を使用する場合、ネックになるのはフィラメント電源である。
すでに持っている45/2A3 Single Stereo Amplifierの 電源トランスには2.5Vのタップがあるので、そのままACで点火している。
しかし、今回、使用する電源トランスには2.5Vのタップがないので、一工夫必要である。
この電源トランスには0V-CT(3.15V)-6.3V3A、0V-5V-6.3V2A、0V-6.3V3Aの3組のヒーター巻線があるので、0V-5Vと0V-CT(3.15V)を整流し抵抗でドロップさせてDC点火することにした。
ただし、0V-5V巻線ではドロップによる損失が4.5Wにも上るのが難点である。
組み上げてから気がついたが、0V-CT-6.3V巻線をCT(センター・タップ)で分離できれば 0V-3.15V巻線が2組、用意出来たかもしれない。(念のため、トランスを取り外して確認したところCTタップは巻線内部から1本線で取り出されいた。残念!!)
0V-3.15V巻線ではドロップによる損失はたったの0.7Wである。
残りの6.3V巻線は前段への供給に使用する。

回路は前段に6AQ8を使用した直結である。
出力段45の動作点を220V30mAとするとバイアスは-40Vとなる。
電源トランスの280Vタップを両波整流するとプレートに供給できる電圧は340V程度となるので、グリッド電圧は 340-220-40=80Vとなる。
この80Vが前段6AQ8のプレート電圧となるので、特性図にロードラインを引き検討した結果、負荷抵抗を100kオームとした。
このロードラインからはP-Pで約90Vが得られるが、45のバイアス-40Vに対しては、ほとんど余裕がない。

構成

シャーシーは6FM7差動PP直結アンプだったものを再利用した。
2mm厚のアルミ・パネル(W300*D200)を木製サイド・パネルで囲ってある。
不要となった真空管取り付け穴は冷却用通風穴としている。

サイド・パネルが木製なので、そこへ部品を取り付けることが出来ないため、簡単な回路の割には込み入った配置となっている。
フィラメント回路のドロッパ−抵抗やカソード電圧のかさ上げ用抵抗等で十数Wの損失があるので、排熱を考慮する必要がある。

特性



若干ながらNFBをかける余裕があったので、2.5dB掛けてみた。
ノンクリップ出力は1.0W、DF=2.0であった。

各出力における-3dBの範囲は
0.125W:15Hz-100kHz
0.5W:15Hz-100kHz
1W:20Hz-90kHz
となり、高域側が伸びている。

800kHzにアバレがあるが、出力トランスはかなり素直な特性だと思われる。

典型的なシングルアンプの歪率特性である。
1kHz5%時の出力は1.0W強となった。

出力0.5Wで測定したクロストーク特性である。
Rch:1.4mV、Lch:1.4mVの残留雑音があるが、20Hz-20kHzで60dB強が確保できている。

VT-52を挿してみると・・・

VT-52は45Specialとも呼ばれているが、45と比べるとかなり大ぶりである。
しかし、45と相似な動作例もある。
ただし、フィラメント電圧が45の2.5Vに対して6.3V〜7.0Vとなっている。
本機では45のフィラメントを0V-CT(3.15V)や0V-5Vを整流し抵抗でドロップさせて供給しているが、取り出しを0V-6.3Vに変更し、ドロップ用抵抗を調整すると6.3V〜7.0Vが得られるので、VT-52を挿すことができる。
この方がドロップ用抵抗による損失は数百mWで済むので、シャーシー内の熱容量が緩和される。
また、定電流回路でプレート電流を固定しているので、フィラメント電圧の変更のみで、VT-52に挿し替えることができる。

最大出力は、若干ながらVT-52の方が大きい。
DF=2.7で、45のDF=2.0よりは大きな値となっている。

比較のため45の0.5W周波数特性(青線)を併記してあるが、 VT-52の方が低域よりとなっている。
各出力における-3dBの範囲は
0.125W:10Hz-70kHz
0.5W:15Hz-70kHz
1W:20Hz-70kHz
である。

比較のため45の1kHz歪率(青線)を併記してあるが、VT-52の方が全体的に低歪率である。
1kHz5%時の出力は45の1W強に対して1.5Wとなった。

エピローグ

45シングル直結アンプのはずであったが、VT-52を挿してみるとこちらの方が特性も良いし、シャーシー内の発熱も少ない。
そのような訳でVT-52シングル直結アンプとして使用しているが、フィラメント配線を付け替え、ドッロパー抵抗のジャンパーを外すだけで45アンプに戻すことが出来る。

音の傾向であるが、巷では45は繊細な音がするとの評判であるが、筆者の感想としてはかなり「カッチリ」した音に感じた。
VT-52に挿し替えると、その「カッチリ」感がなくなりソフトになるが、それでも細部がボヤけることがなく、低域もすっきりと出るようで、VT-52の方が好ましと思われる。

ドライブ段の変更

FETと真空管を組み合わせたSRPP回路の実験を行い、それを2A3アンプと組み合わせてみたが、その結果が良かったので本機にも応用してみる。
やはり、バイアスの深い45を6AQ8だけでドライブするのには、かなり無理があり、それを解消してみたいと思っていた。
SRPPにするためには前段の球が2本必要となるが、スペースがないので、FETと6BQ7Aによるカスコード回路のみとした。
何故、6BQ7Aかというと6AQ8とピンアサインが同じで、低いプレート電圧でも、そこそこプレート電流が流れるからである。
ただし、プレート電圧80Vプレート電流2mAではバイアスは-1.5V程度しかないので、グリッドに+4.4Vを掛けてカソード電圧を6.0Vまで引き上げている。
グリッド・バイアスは4Vツェナーで安定化してある。
FETは2SK30を使用するが、ドレイン電流が2.0mA程度となるため、IDSSが4.0mA以上のものから選別した。
特性的には、出力も増大し歪率もかなり改善されたが、周波数特性は低域は伸びたが、高域の落ち込みが早くなった。
試聴では、全体的にボリウム感がでてきたのがよく分かった。


FETドライブのためゲインに余裕ができ、NFBは4.4dB掛けてみた。
ノンクリップ出力は1.1W、DF=2.8であった。

各出力における-3dBの範囲は
0.125W:10Hz-45kHz
0.5W:15Hz-50kHz
1W:18Hz-50kHz
となり、低域は伸びたが高域は落ち込みが早くなった。

FETドライブにした結果、歪率特性はかなり改善され、歪率5%の出力も増大した。

ドライブ段の変更その2

やはり、カスコードだけでは物足りなくなり、SRPP回路としてみた。
SRPPにするためには前段の球が2本必要となるので、シャーシー内部を整理してスペースを作り、FETと6BQ7Aによるカスコードに6BQ7Aのカソード・フォロワーを組み合わせたSRPPとしてみた。
見方を変えるとFETと6BQ7Aによるカスコードではプレート抵抗として47kオームが使用されていたが、それが真空管による抵抗に置き換わったことになる。
電圧配分はカスコードだけの時と同じになるように6BQ7A上側ユニットのカソード抵抗を調整し、微調整はFETのソースに挿入した可変抵抗器で行った。
特性的には、周波数特性は変わらないが、歪率は若干、改善された。
試聴の結果であるが、筆者の駄耳では残念ながらどこが変わったのか不明である。

各出力における-3dBの範囲は
0.125W:10Hz-40kHz
0.5W:15Hz-50kHz
1W:18Hz-50kHz
となり、カスコードの時とほとんど同じである。

SRPPにした結果、歪率特性はカスコードの時よりも若干ではあるが改善されている。

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Last Update 21/Aug/2012 by mac