夏向きの省電力・小出力アンプである。
小出力アンプの分野ではぺるけ氏のミニワッターが有名であり、筆者も専用シャーシーを頒布してもらい、すでに 5687差動PP直結アンプ ミニワッター版に仕上げて使用している。
この回路図を見ていて思いついたのであるが、FETドライブのシングル・アンプが出来るのではないかと。
5687差動PP直結アンプを上下で別けた形のシングル・アンプを製作してみる。前段のFETは以前、ぺるけ氏に分けていただいた2SK30があるので、それを使用する。
ただし、1本の真空管を左右チャンネルで使うことになるので、真空管内部にシールドのある6DJ8/E88CCとする。
使用する真空管は1本だけとなるので、複数本の場合と比べて、ヒーター電力はその分、減少するので省電力となる。
さらに前段がFETなので、直結にしても出力段のカソード電位は十数V程度で、前段が真空管の場合に比べてカソード電位のかさ上げによる電力も減少する。
2SK30で6DJ8/E88CCをドライブする直結アンプである。
6DJ8/E88CCのプレート損失は1.5Wなので、動作点を135V10mAとし、6DJ8/E88CCのカソードには10mAの定電流回路を挿入した。
LM317の制限抵抗は、計算上では125オームとなるが、ぴったりの抵抗はないので、複数の抵抗を組み合わせてこの値に近づける。筆者は180オームと470オームをパラにして130オームとした。
これにより6DJ8のプレート電流は常に10mAとなるようにバイアスが調整される。
トランス類は全て東栄で、5VA絶縁トランス、6.3V0.5Aヒーター・トランス、T-1200を使用した。
B電源はブリッジ整流後、FETのリップル・フィルターを通し、前段の2SK30へはツェナーで24Vに落として供給する。
使用真空管は1本だけなので、タカチYM-250のケースに全て収納する。
この回路のヒーターも含めた入力電力は6W程度なので、特に通風を考慮しなくても大丈夫である。
真空管はL型の取り付け金具で横向きに配置した。
前面は電源スイッチ、ボリウム、背面は入力端子、スピーカー端子、ヒューズ、ACインとなる。
NFBは10.5dBかけてある。
ノン・クリップ出力は約0.3WでDF=6.1である。
ノン・クリップ出力が0.3Wなので、周波数特性は8オーム負荷で1V、出力0.125Wで計測した。
-3dBの範囲は20Hz-50kHzと非常に広範囲となった。
歪率特性は「WG、WSによる歪率の測定」によるデータである。
100Hzの特性が良くない。
クロストーク特性は出力1Vで計測した。
低域は残留ノイズにマスクされているが、それでも-70dB以上となっている。
高域は10kHz過ぎから低下しており、20kHzで-54dBとなっている。
このアンプは寝室のオーディオ・システムに組み入れて使用している。
消費電力は数W程度であり、節電の夏向き小出力アンプであるが、音は侮れないものがある。
筆者はインターネットラジオでJAZZをBGMとして流しているが、その用途では不足がない。