6FM7差動PP直結アンプ
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プロローグ

「差動PP直結アンプの実験」「差動PP直結アンプの実験その2」で2段構成SRPPドライブの直結アンプの 実験を行い、「8B8差動PP直結アンプ」を完成させた。
この「8B8差動PP直結アンプ」、ノン・クリップ出力は1Wにも満たないが、小音量でも豊かな低域が実感でき、リビングの常用アンプとなった。
今までのリビングの常用アンプは「 1626 PP Stereo Amplifier」であった。このアンプ、初めての差動PPで今までとは違う音質で気に入っていたが、「8B8差動PP直結アンプ」を聞いてしまうと見劣りがする。
「差動PP直結アンプの実験その2」では6FM7も試してみているので、「 1626 PP Stereo Amplifier」を改造して6FM7差動PP直結アンプにしてみる。
本当は手持ちのあるEL34で差動PP直結をやってみたいが、トランス類を新規購入する必要があるので、将来の楽しみにとっておこう。

6FM7

6FM7は3極管が2ユニット、入ったコンパクトロン管である。
6FM7を使う上で問題となるのが電源トランスである。ヒーターが6.3V1.05Aと中途半端で、「 1626 PP Stereo Amplifier」で使ったST-130の6.3V2Aでは、2本の6FM7に供給すると定格をオーバーしてしまう。 さらに、代表的な動作点が175V40mAであるのでPPステレオの場合、B電源は160mAが必要となる。

「差動PP直結アンプの実験その2」で使用した電源トランスは、6.3V3Aの巻き線が2組あるのでヒーターはOKであるが、B電源は220V-280V120mAしかない。
動作電流を30mAとしてロード・ラインを検討してみると、最適とは言い難いが200V30mAであれば、何とかいけそうである。この場合、負荷は5kオームとなるので、出力トランスは手持ちの東栄OPT-10(10k)が使える。
ヒーターは2組の6.3V巻き線をシリーズに接続して12.6Vとして供給している。そのため、片チャンネル2本の6FM7のヒーターを直列接続している。
12AT7も当然、12.6Vで点灯させているが、このようにした方が12AT7の2つのユニットの特性が揃うとのことである。
トランスの6.3V巻き線が1組、余っているのでこれを整流し、7905を挿入してバイアス電源とした。

SRPP段の上側ユニットと下側ユニットの間に挿入してあるバイアス用の抵抗を調整して、出力段のDCバランスをとる。
この抵抗はとりあえず2kオーム程度を挿入し、DCバランスが最小となる6FM7と12AT7の組み合わせを作る。
これだけではDCバランスを±0まで追い込めないので、この抵抗値を調整して、12AT7のカソードに挿入した100オームの可変抵抗だけでDCバランスがとれるようにする。筆者の場合、この抵抗値は1.5kオーム前後になった。
ヒーターには+50V程度のバイアスをかけてある。SRPPを構成する6FM7の3極管のカソードと出力管部のカソード電位は数十Vとなるので、H-K耐圧の不足を補うためである。

配置

本機は前述したように「 1626 PP Stereo Amplifier」の改造である。主な変更箇所は電源トランスの載せ替え、ソケットの変更等である。
6FM7は同一ブランドでも高さがバラバラである。

前段と直結にしたため、出力段カソード電圧は110V程度となる。カソードには1.2kオーム20Wの抵抗を挿入してLM317Tの許容電圧不足を補っている。
この抵抗には6FM7カソード電流30mA*2=60mAが流れるので消費電力は4.32W、両チャンネル合計では8.64Wにもなる。
この抵抗をシャーシー内に配置すると熱的にはかなり厳しいことになるので、ケースに収納してシャーシー上に置いてある。

前段用電源安定化回路とバイアス用安定化回路を追加したが、スペースの関係で側板にビス留めしてある。

それでなくても消費電力(トランス損失は無視)は「 1626 PP Stereo Amplifier」の42Wに対して 本機では70Wにもなる。
増加の要因はヒーター電力の増大、直結にしたことによるプレート電圧の増大であるが、消費電力はほぼ全て熱に変換されてしまうわけであり、真空管アンプの熱対策はかなり重要なファクターである。

特性

1.5dBのNFBをかけると900mV入力でちょうど1W出力となった。ノン・クリップ出力は2Wである。
もうすこしゲインがあった方が使いやすいかもしれないが、6FM7のバイアスが深く、2段増幅ではこんなものである。

初段管を12AX7にすればゲインは改善されるが、その場合、初段管にかける電圧を100V程度まで上げるか、電流を絞らないと12AX7のカソード電圧が1Vをかなり割り込んでしまう。

電圧を上げると、この直結方式では終段管のカソード電圧が上昇し、結果的にプレート電圧も高くなり、得られる出力は同じであるが消費電力が増加するということになる。
また、電流を絞ると音がやせる感じがして好みの音にならない。

12AT7にすると数十V程度の電圧でも12AX7よりもより多くの電流が流せて、初段管のカソード電位も1V以上が確保できるが、当然、ゲインは下がることになる。

なお、ダンピング・ファクターは3.0である。

低域は素直に伸びているが、内部キャパシタンスが効いているのか高域の低下が早い。
20kHzで-0.9dB、30kHzで-3.0dBである。


歪率特性は「WG、WSによる歪率の測定」によるデータであるが、私の環境では実際よりも大きな数値になっていると思われる。
しかし、他のアンプとの比較には使える。
100Hz、1kHz、10kHzのカーブがそこそこ揃っている。

クロス・トーク特性は出力1Wに設定して測定した。
L→Rは非常に優秀であるが、R→Lはそれよりも20dBも悪化している。
しかし、20Hz-20kHzでなんとか-60dBは確保できているが、実装系に何らかの問題があるようである。

エピローグ

出力トランスP1-P2間の電圧が±0となるように初段のカソードに挿入した可変抵抗を調整する。30分程度、通電してから調整するが、やはり数十mV程度のフラツキがある。
この電圧が数百mV以内であれば出力トランスのアンバランス電流は数mAに収まるので実用範囲となる。
頻繁に調整しなくても数百mV以内となっているが、季節が変わったら再調整する必要があるかもしれない。

音質的には、「8B8差動PP直結アンプ」と同じ傾向であるが、本機の方がパワーに余裕があるせいか、ダイナミック・レンジが広がった感じがする。
本機がリビングの常用アンプとなったが、普段よりちょっと大きめの音にするとかなり良い感じで鳴ってくれる。
ただし、小音量でBGM的に聞く場合は、「8B8差動PP直結アンプ」の方がディテールまで再生できているようである。そのため、こちらを2階寝室用アンプにしている。

発熱対策

前述したように本機の消費電力(トランス損失は無視)は70Wにもなる。
そのため、1時間も通電しているとトランスやシャーシー上部は触れないほどではないが、かなり熱くなる。
シャーシー内の発熱を抑えるために、カソードに挿入してある抵抗を1.2kから1.5kへ変更した。これにより、シャーシー内部の発熱の内、2.16W分をシャーシー上に設置した抵抗へ移すことができる。
これによってもトータルの発熱量は変わらないが、シャーシー内部の発熱を幾分でも緩和することができる。
さらに定電流用ICに印可する電圧が18V低下し、耐電圧ぎりぎりでの使用であったのが、かなり緩和された。
そのかわり、抵抗を収納しているケースのカバーが以前より熱くなってしまった。たかが2.16W、されど2.16Wといったところである。


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Last Update 17/Sep/2010 by mac