1626PP差動アンプを作ったが、次のステップとしてはやはり直結にしてみたい。
シングルの直結アンプは45/2A3 Single Stereo Amplifierがあるが、それと同じ手法で直結を試みた。
その方法は前段を電源安定化したSRPPとすることである。SRPPの出力は上側ユニットのカソードから取り出すが、ここの電圧は電源電圧の約1/2である。そのため、電源電圧の変動による影響も1/2となり、さらに安定化しているので、その変動も無視できる。
SRPP回路にした場合、上側ユニットのカソード電圧は本当に電源電圧の約1/2になるのか。
また、球の種類やブランドによるバラツキはどうなのかを確かめてみる。
FETとツェナーダイオードによる簡易型安定化電源+リップル・フィルターを作り、回路図のようなSRPPを構成し、球を入れ替えて各部の電圧を計測してみた。
50kの可変抵抗で供給電圧を変化させてデータを採った。
結論から言うと、球によっては内部ユニットのバラツキにより、約1/2から10V以上、ズレているものもあったが、上側ユニットのカソード電圧は概ね電源電圧の約1/2となった。
30年以上も前に購入したテレフンケンのECC81は優秀であった。2本だけしかないが、170V引加した場合、89.5Vと89.6Vとなった。
その他の国産球は通測用やHi-Fiと銘打ってあっても結構、バラついていた。
球は12A6と12AT7とした。12A6は小ぶりのビーム管であるが、手持ちが2本あったのと3極管接続時のデータがきれいなので使うことにした。
特性図から動作点は250V30mAとしたので、定電流回路のLM317Tは60mA流れるように設定した。また、直結にすることにより、出力段のカソード電位は「SRPP供給電圧の1/2+出力段バイアス」となるので、1kオーム20Wの抵抗を挿入してある。
この抵抗の損失は3.6Wにも上るので、ワッテージの大きなモノが必要となる。
12AT7のCRDは1.5mAでよいが、手持ちがなかったので2mAとなっている。
DCバランスは12AT7のカソードに入れた100オームの可変抵抗器と電源側に入れた50kオームの可変抵抗器でとることにした。
12A6を回路図の上下で入れ替えたら、DCバランスは12AT7のカソードに入れた100オームの可変抵抗器だけで取ることができたので、SRPP段の供給電圧は同一とした。
12A6のグリッド電位はもう少し、高くなると予想していたが68Vとなり、カソード電位は
これにバイアス分が加わった81Vとなった。
回路図には記載してないが、ヒーター回路には50Vほどの直流バイアスをかけてある。これはSRPPの上側ユニットのカソードと出力段のカソードは80Vにもなるため、H-K耐圧の不足を補うためである。
ノン・クリップ出力は1.5W程度となった。
NFBなしでも高域は1626PPよりも伸びている。やはり、SRPPの低インピーダンス・ドライブが効いているのかもしれない。
歪率特性は「WG、WSによる歪率の測定」によるデータであるが、SGはWaveGeneではなく年代物のTRIO AG-202Aを使用した。
歪率は1626と傾向は同じである。
球を差し替えた場合のプレート電圧P1・P2(対アース)、グリッド電圧G1・G2(対アース)、カソード電圧K(対アース)は上図のようになった。
モノラルであるが当然、音出ししている。
球を挿し換えみると・・・
ここで、ちょっとしたいたずらをしてみる。同じ回路定数のままで別種の球を挿したらどうなるだろうかと・・・
手持ちの出力管で2本以上ある球を探すと6FM7、6DG6GT、6V6、6L6GT
、6CA7/EL34が出てきた。
6FM7はコンパクトロンなので、ソケットを換えなければダメであるが、その他はソケットのNo1ピンをアースしておけば、全てそのままで挿し換え可能である。
電流は2本分で60mAに規制してあるので、どの球を挿してもプレート電圧(対アース)は340V前後となる。電圧の違いはヒーター電力の違いにより、電源トランスの負荷が変わるためである。
グリッド電圧はSRPP供給電圧の1/2よりも下がり55V〜62Vに分布した。カソード電位はこの電位にバイアス分を加えた76V〜96Vに分布している。
このような回路で直結にした場合、球の種類によってSRPP段の供給電圧を調整しなければならないと思っていたが、そうでもないようである。
出力段の動作諸元に前段の動作が引っ張り込まれている感じがする。
入出力特性であるが、やはり感度の高い6CA7/EL34には余裕があるので数dBのNFBはかけることができそうである。
周波数特性は6CA7/EL3の高域の落ち込みが若干、早めであるが、これでも1626のNFBをかけた特性と同じである。
歪率の測定は1kHzだけであるが同じ傾向である。
やはり、6L6や6CA7のようなプレート損失の大きな球が良いようである。回路定数を変えていないので、それぞれの球の最適動作にはなっていないが、プレート損失の大きな球では許容範囲に入っているようである。
音のキャラは違うが6L6と6CA7が良いように思えた。
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