秋月電子通商で10W+10WステレオD級アンプモジュール(USB/IF付き)というのが700円で売られている。
このモジュールにはTripathのデジタルステレオアンプTA1011Bと、MICRONASのUSB-DAC UAC3552Aが実装されている。
UAC3552Aのデータシートによると24bit48kHzをサポートしているとのこと。
筆者が使用しているDACは16bit48kHzなので、24bitに惹かれて購入してみた。
とりあえず、モジュールをUSB-DACとして動作させ、特性を計測してみる。
参考資料に記載されているように、USB入力と電源を接続して基板上のステレオミニジャックの出力を計測する。
USBの接続であるが、筆者はダイソーのUSBケーブル(105円)を切断して使用した。
左図のようにモジュールをUSBケーブルでデスクトップPC(Windows 7)に接続し、ミニジャックからアナログ出力を取り出し、47kオームの抵抗でターミネートし電子電圧計(VTVM)で計測する。
デスクトップPCにインストールした多機能 高精度 テスト信号発生ソフトWaveGeneによりサイン波デジタル信号を発生させる。
下記がUSB-DAC UAC3552Aの周波数特性であり、比較のために秋月で売られているPCM 2704を使用した
USBオーディオDAコンバーターキットの使用周波数特性も示してある。
このキットについては秋月のUSB-DAC KITとしてまとめてあるので参考にされたい。
WaveGeneで48kHz16bit1kHz0dBFSの信号を発生させた場合、UAC3552Aの出力は0.115Vであり、PCM 2704の0.66Vと比較するとかなり低い値となった。
一般的なCDプレイヤーの出力電圧が2V程度と言われてるので、それに比べると20数dBも低いことになる。
また、低域は問題ないが、高域は10kHzから落ち込みが始まっており、さらにWindowsの標準ドライバーでは残念ながら24bitがサポートされていないと思われる。
次はモジュール全体の特性を計測してみる。
基板上のミニジャックにプラグを挿入すると、UAC3552A内部の音量調整やミュート回路がバイパスされる構造となっている。
そのため、基板上のミニジャックにプラグを挿入して出力を取り出す場合、電源とUSB入力の配線だけでOKであるが、スピーカー端子から取り出す場合、参考資料に記載されているように、基板の改造が必要である。
下記がWaveGeneで48kHz16bit0dBFSのサイン波を発生させ、スピーカー端子を8オームのダミーロードでターミネートし電子電圧計(VTVM)で計測した周波数特性であるが、どういうわけかUAC3552A単独時よりも高域の落ちが改善されている。
最大電圧は1.33Vとなったので、電力に換算すると0.22W(220mW)であるが、
それにしても0.22Wとは随分、控えめな値である。
UAC3552A内部の音量調整やミュート回路が効いていることも考えられたので、UAC3552AのGPIO0〜GPIO3にミュートと音量調整の外部回路を接続して確認した結果も0.22Wであった。
どなたかのサイトに、このUAC3552Aのゲイン不足は「プログラムで設定されているため」と記載されていたが、それを裏付ける結果である。
UAC3552Aのゲインを2倍に出来ればモジュール全体の出力は0.9W近くになるので、実用性がぐんとUPする。
ネット検索すると、外部回路でLPFを形成するOPアンプの定数を変更してゲインアップしているケースがあった。
このモジュールでは5Vを昇圧してTA1011Bの電源としているので、直接、12Vを定電圧IC7805Mの入力に供給して特性を計測してみた。
下記がその周波数特性であるが、茶色の線で示したUAC3552A+TA1011Bのモジュール全体では、1kHzFS0dBにおける出力は電源電圧5V時の0.22Wから0.26Wとアップしたが、高域が持ち上がっており、10kHzでは約2倍の0.45Wとなっている。
赤線はUAC3552Aと切り離し、TA1011B単独としてアナログ信号発生器から入力した時の特性である。
1kHzにおける最大出力は8オーム負荷で2Wが得られたが、周波数特性は0dB=0.5Wで計測した。
低域は問題ないが、高域は10kHzで-3dBもダウンしているが、TA1011Bのデータシートでは20kHzまでフラットであるので、このモジュール特有の特性かもしれない。
それにしても中途半端な結果である。
UAC3552Aのゲイン不足はいかんともしがたく、このモジュールをUSB-DACとして使うのは無理であろう。
モジュールそのままでは0.22Wしか得られないし、改造してモジュール全体のゲインを倍にしてようやく、0.9Wといったところである。
TA1011Bを分離して単独のアンプにするにしても、ある程度、手を入れないと満足する特性が得られないと思われる。
そのままでは、0.22Wしか出ないが特性自体は悪くないので、能率の良いスピーカーと組み合わせて、PCデスクトップのオーディオ
装置として使うというのが落としどころであろうか。