30mBAND送信機の製作
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水晶


 トランシーバーであれば、VFOは送受兼用でかつ常に発振させていれば良いが、送受信機ではそれぞれに安定なVFOが必要となる。VFOを一つだけにしてそれを送信機と受信機で兼用することも可能であるが、今回はそれぞれに装備することにした。ペアになる真空管受信機ではジャンクのVFO基板を転用できたが、送信機用に安定なVFOを作るのも面倒になってきたので、VXOで誤魔化すことにした。
 もう一つの問題がある。アマ無線では送受信の周波数は同一なので、送信中は受信機を停止する必要がある。こちらはマイナス電源を用意して真空管のバイアスを深くして感度を落とせば良いので、受信用のVFOも発振させたままでOKである。問題は受信中の方である。送信機のVFOを停止させなければならないが、VFOの電源をON-OFFさせれば周波数安定度に影響を与えてしまう。昔もこの問題はあったが、単純にVFOの電源をON-OFFさせていたと思う。随分とおおおらかであったが、100Hzのフィルターで受信されるのが当たり前の現在ではこれでは問題であろう。
 VXOで作り電源のON-OFFでどのくらいの変動があるか確かめてみる。もしダメなら受信中にはVXOに適当な固定コンデンサーを付加して強制的に発振周波数を下げて受信周波数から外すことにしよう。秋葉原で10.150MHz付近の水晶を探したが、残念ながら見つからなかった。しかし、ラジオデパート2Fで5.0688MHzの水晶を売っていたので購入した。これを2倍すると10.1376MHzとなるので、うまく動かせれば10.120〜10.140MHz程度がカバーできそうである。

VXO

 2SK241で簡単なVXO回路を作り、可変範囲を調査してみた。インダクターにはFCZ1R9を使い、バリコンは数十pFである。結果的には約2KHzであった。これは5MHz台の基本波であるので、実際は2倍波を使うので可変範囲は4KHzとなる。しかし、これではあまりにも範囲が狭い、インダクターを追加してもあまり変わらない。発振回路自体を別のものに変更する必要があるかもしれない。コルピッツで発振させてバッファーさせた回路で試してみたが、ニアバイが多くて使い物にならない。元の回路で調整したが、最大でも2.5KHzがやっとであり、これがこの水晶の限界かもしれない。

VXO2

 2SK241の回路では2.5kHzしか可変しなかったので別の回路を試してみた。初め、発信回路だけで可変範囲を調査したところ約9kHzとなった。これは5MHz台での可変範囲なので2逓倍すると18kHzとなる。周波数は10.120〜10.138kHzとなるので国内QSOはこれでカバーできそうである。モニターするとトーン、ニアバイは別に問題ないようである。出力は50mWであるのでこれで十分次段をドライブできる。


アンプ部

 VXOで50mWあるので目標の5W出力までは20dB増幅するだけでよい。昔作った50MHzトランスバーターのリニアアンプ基板があったので流用した。VXOとリニアアンプを接続しダミーロードで出力測定すると2Wであった。このトランスバーターの後には真空管式のハイパワーリニアを接続していたので、2W程度で事足りていたが、単体で使う予定なのでこれではちょっと物足りない。基板を観察すると出力側にステップアップ用のトランスが挿入されていないのに気がついた。手持ちのフェライトコアにインピーダンス比1:4のコイルを巻いて出力をステップアップすると簡単に10W近くの出力が得られた。
 リニアアンプの入力側に3dBアッテネーターを挿入した後、VXOとリニアアンプの接続に50pFコンデンサーを使用したら約5Wの出力となった。ダミーロードに喰わせた音をモニターしたが、問題なしであった。その後、出力回路にステップアップ・トランスを入れ直して完成である。


試験中のVXO。生プリント基板全体をアースとしてその上に 部品を配置している。接続点は基板の切れ端を瞬間接着剤で 接着して作る。パターンを書いてエッチングしていた時もあったが、 いまはこれで完成品である。

コントロール部

 アンテナ切り替え、セミブレークイン、キーイングのコントロールが必要である。キーイングはキーイングすることによりトランジスタ・スイッチを動作させてVXOバッファーとドライブ段の電源をON/OFFさせてCWの信号を作り出している。セミブレークインはキーダウンの信号をトランジスタで反転させた後、コンデンサーと抵抗によるディレー回路により実現している。ディレー時間は半固定抵抗で可変出来る。
CALはキャリブレートである。受信周波数に送信周波数を合わせるためにこのスイッチを使い、VXO部を動作させCWのトーンが一致するように送信周波数を調整する。


 下図はアンテナフィルター回路である。π型3段である。VXO回路についているリレーは受信時に送信周波数を低い方へシフトさせるためのものである。送信機と受信機がセパレートの場合は受信時には送信機を停止しておく必要があるが、VXO回路まで停止してしまうと送信時の立ち上がりに周波数が変動する恐れがある。そのため、VXO回路には常に通電し発振周波数だけをシフトするようにしている。


左側がアンプ、中央がコントロール、右側が12Vスイッチング電源である。 フロントパネル側にVXO回路がある。

運用

 真空管式受信機と組み合わせて運用してみた。送信機と受信機がセパレートの場合、送信時には受信機保護のため受信機を停止するか感度を落とす必要があり、真空管時代にはグリッドへマイナス電圧をかけるスタンバイ回路と呼ばれるものがあった。
 今回もそれらに対応にするつもりであったが、アンテナを接続して送信してみると受信機の感度が低いせいか別段スタンバイする必要もなさそうである。かえって受信機が生きているため送信CWがそのまま復調できるのでサイドトーン回路も不要である。
 信号の強い局を受信し、キャリブレートで周波数を合わせてコールしてみたが、呼んでいるのは当局だけのはずであるが応答がない。再度キャリブレートでCWトーンを合わせてコールするとようやく応答があった。CWでは相手の聞いている周波数にこちらの送信周波数を一致させる必要があるが、相手側のフィルターが狭いとぴったり合わせないと聞いてもらえないようである。

上段が送信機、左から電源スイッチ、キージャック、キャリブレートスイッチ、VXO調整、 下段が真空管式受信機、レトロなヘッド・フォーンと電鍵を使っている。

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15/Feb/2003 Copyright all revered by mac