短波受信機の製作
HOME BACK

ARC5

 ARC5は戦中−戦後にかけて使用された米軍航空機用無線機で、モノバンドの送信機群と受信機群で構成されている。これらはサープラスとして大量に放出されたのでアマチュア用にも多用された。受信機の内、LF用はIFが低く選択度も良かったのでQ5erとして、HF帯用はお手軽な受信機としてビギナー向けとして使われたようである。ARC5のマニュアル類はこのサイトからダウンロードできる。

ラックにマウントされた受信機(参考)

 無線を再開した二十数年前の軍用サープラスのカタログにも掲載されていたが、その当時ですでにMFやHF用の受信機はカタログ落ちしていてLF用受信機や送信機があるのみであった。しかし、2002年のハムフェアで思いがけず、受信機用のギャー付き3連パリコンを1,000円で入手することができた。本当は上記写真のような実物が欲しいが、それなりのお値段なのでとりあえずパリコンだけでも入手できてうれしかった。
 実際の受信機ではパリコンの減速ギャーシャフトにフレキシブル・ワイヤーが接続され、操縦席のコントロール・ボックスで同調操作ができるようになっている。点検調整時にはワイヤーを外して調整用ノブをつけるが、今回はシャフト・カップリングで延長してクランク付きの大きめのつまみをつけた。つまみ約30回転でパリコンが180度展開するが、なかなかのフィーリングである。このバリコンを使って受信機を作ってみることにする。

入手したパリコン、円盤がダイアルとなっている。

受信機の構想

  入手したパリコンは3MHz-6MHz用受信機R26のものであった。R26はメタル管使用の高一中二のAM/CWシングルスーパーでIFは1415kHzとなっている。この仕様を踏襲してもよいが、そうするとカバーするハムバンドは3.5/3.8MHzとなり、あまりおもしろくない。6MHz-12MHzとすると7MHzと10MHzをカバーできる。10MHz用には送信機もあるので、QRVするのには好都合である。パリコンの容量をアンテナ・アナライザーを使って測定してみると最大200pF、最小50pF程度となった。オリジナルの2倍の6MHz-12MHzとすればトラッキングもとれそうである。中間周波数も2倍の2830kHz付近とすれば問題ない。
 トラッキングは表計算のExcelを使って検討した。その結果、アンテナ・コイルは4uHとし、局発コイルは3uHとして、パリコンのOSCセクションに直列に240pFを挿入するとするとトラッキングがとれそうである。IFが2.7265MHzと中途半端な値であるが、これは14MHzとMIXして11.2735MHzのクリスタル・フィルターを使ったジェネレーター基板に接続するためである。下図のような発振回路を作り周波数範囲を実測してみることとした。この発振回路は他の無線機のVFOに採用して好結果を得ている。
 発振コイルはアミドンのトロイダル・コアT50-2に24ターン巻いたものを使用した。タップはアース側から6ターンとした。直列に挿入した240pFは固定の240pFと15pFのトリマの並列に変えた。低い周波数はトリマ、高い方はバリコンに付属しているトリマで調整すると8.7MHzから14.7MHzまでの可変範囲が得られた。ダイオードにかけた印可電圧を可変すると容量が変化するのでバリキヤップの代用となる。低い方で約10kHz、高い方で約30kHz変化するのでファインチューニングとすることができる。

受信機の構成

 局発部分の目処がついてきたので、全体の構成を検討してみる。コンセプトは7/10MHzのCWQSOに使用できる受信機である。そのためには選択度も必要であるし、QRHも抑えなければならない。メインダイアルだけではクリチカルなチューニングは困難なのでファインチューニングも必要だろう。昔、製作した熊本スタンダードのジェネレーター基板が出てきたので安直な方法だがこれを利用することにした。真空管で作ろうかとも思ったがそこまでの元気がなかったので、トランジスタで作ることにした。MIXERが2箇所あるが、ここも手慣れたDBMとする。構成は下図のようになった。スプリアス的には非常に問題のある構成だが、手持ち部品を活用するとこのようになった。

RFセクションの実験

 局発もできたのでRFセクションの実験を開始した。高周波増幅だけは真空管で構成するのもおもしろそうであるが、とりあえずお手軽なFETとDBMで構成した。コイル類はアミドンT50-2に28ターン巻き、タップはコールドエンドから7ターンとした。RFセクションは以下のように作った。

 手持ちのゼネラルカバレッジの受信機は米軍用のBC312しかないので、とりあえずIF出力をBC312へ接続し、ダイアルを2.7265MHzへセットした。局発には周波数カウンターを接続し8.826MHzになるようにパリコンをセットすると6.1MHz付近の日本短波の競馬放送が聞こえてきた。ANT側とドレイン側のパリコンのトリマを調整して最大感度になるようにした。そういえば大昔、6BE6を使い短波帯を中波帯へ落とすコンバーターを作ったことを思い出した。四十数年ぶりに同じことをやっているわけである。トロイダルコイルなのでコア入りボビンに巻いたものとは違いインダクタンスを可変することができないので、トラッキング調整を追い込むことができない。とりあえず聞こえたということで本日はここまでである。

実験中のセット、左側が局発、右側がRF-MIX

RFセクションの実験その2

 今回はもう1回変換して11.2735MHzのクリスタル・フィルターを使う予定なので、2NDMIXER回路を追加した。こちらもお手軽にDBMとFET1石の局発である。例によってIF出力をBC312に接続して2NDIFである11.2735MHz付近に同調させた。6.1MHz付近の日本短波を探すと問題なく受信できた。アンテナを外してダイアルをスキャンするといろいろなポイントでビートが聞こえる。やはりスプリアスには弱いようである。
 以前製作した50MHzQRPトランシーバーは11.2735MHzのクリスタル・フィルターを使用しているので、バラックセットの出力をこのトランシーバーのクリスタル・フィルターに接続した。さすがにAMモードの受信は辛くなったが、ゼロビートで合わせるとそこそこ安定して聞こえてくる。7MHzに合わせるとCWもOKである。ただし、SSBはUSBモードになってしまうので復調できない。


IF-AFセクション

 押入の奥から昔使った熊本シティスタンダードのジェネレータ基板を引っぱり出してきた。熊本シティスタンダードはJA6BI田縁OMが発表した一連の作品群で、ジェネレータ基板は1980年代初めに秋月でも売られていた。この基板とCB用のクリスタルフィルターを購入して50MHzのトランシーバーを製作した。今から20年程前の話である。コンデンサー等を交換し、キャリア発振が不安定だったので2SK125に変えてLSB/USB/CWに対応できるようにした。この基板は送信回路もあるのでCW送信できるようにリレーを追加した。
 全体の構成はMIXERが2段あるが、高一中ニそのものである。バラック状態であるが7MHzのCW/SSBが快調に聞こえた。ただし、局発範囲に中間周波数の11.2735MHzを含むので、クリスタルフィルター以降のブロードになっているIFアンプが約500KHzの幅で局発による感度抑圧の影響を受けている。しかし、7MHzと10MHzは全く問題ない。
ジェネレータ回路図(オリジナル)

 


トランシーバー化の実験

 現状の構成では熊本シティスタンダード基板(ジェネレーター)と初段のミキサーの間には増幅回路が入っていないので、ジェネレーターで送信状態にすると受信周波数をそのまま送信周波数とすることができる。RFアンプと初段ミキサー間に送受切り替えのリレーを追加した。ついでにジェネレーターの送受切り替えダイオードもリレーに置き換えた。
 各リレーをCWモード、送信モードにして別の受信機でチェックするときれいなトーンのキャリアが聞こえてきた。送信バラモジには300mV程度直流を印可するとCWとなる。RFアンプの入出力を切り替えて初段ミキサーからの送信信号を入力し、出力を計測すると数mWあった。この後、2ステージのリニアアンプで押せば簡単に5W程度の出力になりそうである。
 ついでにSSBも試してみた。こちらもQRP出力計を接続すると数mWの出力が得られた。別の受信機でチェックするととりあえず問題なさそうである。

RF増幅セクションの真空管化

 2SK241で誤魔化したRF増幅部であるが、ドレイン側のインピーダンスが高くないので、せっかくのバリコン同調もあまり効果がないようである。ここはやはり真空管で試してみることにする。B電源は100V:100Vの絶縁トランスがあるのでこれを使うことにした。ヒーターは5VのレギュレータICにダイオード2本直列にして下駄をはかせて6.3Vを作り6BA6を直流点火とした。
 プレート側も同調すると発振の危険性も多くなるので、プレート側のコイルとアンテナ側のコイルが結合しないように配置した。やはり真空管にしたことでプレート側のトリマも効くようになった。7MHzはFETの時とあまり変わらない感じであるが、10MHzはかなり良い感じとなった。7MHzではバックノイズが多くもしかすると発振気味なのかもしれない。
 アンテナ側に挿入してあるトラッキングエラー補正用のパリコンを廻すと感度が急上昇するポイントがある。どうやら期せずして再生状態となっているようである。部品配置を手直ししてグリッドに47オームの抵抗を挿入したら安定したが、つまらないただのアンプとなってしまった。ゲインも若干不足気味である。本来ならば1stIFにアンプを挿入するしたいところであるが、そうすると送信時のバイパス回路が必要となる。苦肉の策として真空管の後ろに2SK241を使ったアンプを挿入してみた。結果的に当初の2SK241アンプに真空管のプリアンプを追加した形になった。2SK241のソースのバイパスコンデンサーを外してゲイン調整している。

 トラッキングも7MHzと10MHzでは基本的にとれており、エラーはアンテナ側の補正用バリコンで調整できている。これで一応受信機としては完成である。局発のQRHも5NNBKスタイルのQSOには十分使用できるレベルである。残りの問題はダイアルの目盛り書きである。現在は古い塗装をはがして出した真鍮の地肌にサインペンで仮目盛りを振ってある。再塗装して目盛を手書きすることになるがあたりの工作は不得手であるのでどうなることやら。

左下が熊本シティスタンダード基板、左上は追加したキャリアとAF回路
パネル左は周波数カウンター

周波数カウンターとトランシーバー化

 やはり、周波数直読ができないとつらいので、PICを使ったLED表示器をつけた。これはJK1XKP貝原OMによるものでオフセット機能がついており局発周波数を計測して運用周波数を表示できる。
 懸案だったダイアルの目盛りであるが、艶消しの黒色で再塗装して白色の転写シールで文字書きした。100kHz台以下はLEDで表示できるようになったので、MHz台だけを書き入れた。

 トランシーバー化も含めて別項にまとめた。米軍用受信機ARC5のジャンクバリコン活用から始まった受信機の製作だが、当初の目的である40m/30mにおけるCW運用は果たせたようである。使いやすいというわけにはいかないが、数十年前の回路方式である高一中二形式の無線機を実際のQSOに使うことができた。

中央円盤が目盛板、その右側がメインチューニング
上部左はスピーカー、その右が30m送信機改造の外付けリニア(5W出力)

HOME BACK

15/Feb/2003 Copyright all revered by mac