トランシーブ操作用DDSVFOの製作
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キャリブレート

高一中二受信機807CW送信機の組み合わせでQRVしている。受信機と送信機が別々なので交信するためには相手局の周波数に自局の送信周波数を合わせるキャリブレートという操作が必要になる。送信機の発振段だけ動作させ、その微弱電波と受信CWのピッチを合わせるとキャリブレートがとれることになる。市販トランシーバーではCWでもSSBでも相手局の送信周波数に自局の送信周波数が合うように構成されているので、このような面倒な操作は不要である。
SSBが普及し始めた1960年代の無線機でも送受信機別々のものがあり、当然それぞれの無線機にVFOがついていた。SSBを作るのにはヘテロダインする必要があるので送受信機の周波数構成は似たものとなる。当然、VFOの周波数範囲も同じになり、受信機用のVFOで送信機を制御することができれば、面倒なキャリブレート操作から開放されることになる。このような仕組みをトランシープ操作といったが、その後、トランシーバーが普及したので、今や死語になってしまった。
高一中二受信機のIFは455kHzなので、7,000kHzを受信している時、局発は7,000-455=6,545kHzを発振している。この局発を利用してトランシープ操作をする場合、455kHzとMIXすれば送信周波数の7,000kHzを得ることができる。しかし、MIXすると6,545-455=6,090KHzも発生するが、両周波数が近接しているので、これを除去するためのフィルターの製作は簡単にはいかない。
DDSを使い、例えば7,000kHz受信時には局発用に6,545kHzを発振し、送信時には7,000kHzを直接発振できるVFOを製作できればトランシープ操作が実現できる。もちろん、この場合はCW運用のみである。
実は高一中二受信機の局発が安定するまでかなりの時間がかかるので、QRVするためにはかなり前から電源を入れておく必要があり、忙しいときはやはり敬遠してしまう。高一中二受信機の局発を安定化でき、しかも面倒なキャリブレートせずに交信できる、DDSを使ったVFOを計画してみた。

開発環境

DDSは使い慣れている秋月のキットを使用し、コントローラーにはPICを使用するが、DDSVFOでもお世話になったJE1AHW内田OMの自作のオアシスにある「CYTEC版DDS-VFOユニット(スプリット対応)」をカスタマイズさせてもらうことにした。
ソースファイルには丁寧な解説が付いているので、それを元にカスタマイズするわけであるが、試行錯誤の連続となるのは目に見えて分かっているので、開発環境を整えることにした。
ソースを手直ししてPICに焼き込み、コントローラー基板に装着して動作確認という手順を繰り返すことになる。PICを簡単に脱着できるようにゼロプレッシャー・ソケットを使用したコントローラー基板を製作した。ただし、手持ちのゼロプレッシャー・ソケットはPICに対しては幅広なのでPICの足を広げて使った。
オリジナルにはA/B二つのVFO、IFシフト表示等の機能があるので、AVFOを局発用、BVFOを AVFOにIF分を加えて送信周波数になるように手直しした。その他の機能としてはRIT、 バンドチェンジ用の50kHzステップである。

DDSVFO

ソフトの目途がある程度ついたので、DDSVFOにまとめることにした。本機は7MHzと10MHzで使う予定なので、DDSの出力をポストアンプで軽く増幅した後、7MHzと10MHzのBPFを切り替えることにした。BPFはIF+αの通過幅があればOKなのでFCZコイルを組み合わせて作った。表示用のLCDはPIC基板とケーブルで接続できるようにして、配置の自由度を高めるようにした。

DDSVFO全体は1枚のプリント基板上に各部を配置してある。左側が秋月DDS基板、右側がPICコントローラー、上部がDDSポストアンプ・BPFである。

DDSVFO_PICコントロール回路図 PNGファイル 5kB

PIC サンプルプログラム(バイナリー)sample.obj 6kB 右クリックでダウンロードできる。
上記、DDSVFO_PICコントロール回路図において、本サンプルプログラムで焼き込んだPICを装着すると、下記条件のDDSVFOとなる。詳細は筆者()まで。

スタート周波数 7MHz
IF周波数 455KHz
受信時発振周波数 表示周波数-455KHz
送信時発振周波数 =表示周波数
ステップ周波数切り替え 10Hz/100Hz/50kHz
PICプログラマーConfig設定 FOSC HS
WDTE Disable
PWRTE Enable
CP Disable

試験

試験をするため、裸シャーシーにDDSVFO基板とLCD表示器を仮配置した。DDSVFO出力をカウンターで測定すると、7.000MHz表示している時のVFO出力は6.545MHz、PTT端子をアースすると表示はそのままで、VFO出力は7.000MHzとなった。送受が判別しやすいように受信時には(R)、送信時には(T)がLCDに表示するようにした。7MHz用BPFを6.5〜7.1MHzでフラットになるように調整し、10MHz用BPFを9.6〜10.2MHzでフラットになるように調整した。DDSVFOの出力は数十mWあるので、送信アンプをドライブするのになんら不足はない。
DDSVFOを高一中二受信機に接続してみる。受信機の混合段で局発からの入力を外し、かわりにDDSVFOをとりあえず47pFのコンデンサーを介して接続した。DDSVFOのダイアルを廻すとピーギャーとにぎやかである。どうやら入力オーバーでサチっているようである。アンテナ入力なしでDDSVFOのダイアルを廻してもスプリアスやノイズがあまり感じられないようにコンデンサーを調整したら8pFとなった。
高一中二受信機のミキサーには6BE6を使用しているが、局発の入力レベル管理はかなりシビアーなようである。今までは適当な値のコンデンサーで結合していたが、このDDSVFOで適当と思われる結合コンデンサー使用時のグリッド入力レベルはオシロで計測すると数十mV程度とかなり低いレベルであった。アンテナを接続してダイアルを廻すと快調にCWやSSBが受信できた。当然、QRHはないが、弱い信号の了解度はアナログ局発の方が優れているかも知れない。
ミキサーにダイオードDBMを使用した場合はどうであろうか。30m/40m Transverterの受信局発に10mW程度に調整したDDSVFOを入力し、受信出力を高一中二受信機のSSB用メカフィルに接続してみた。トランスバーターの受信出力は50オーム、メカフィルの入力インピーダンスは確か200オームなのでミスマッチであるが、とりあえず試験してみた。高一中二受信機本来の6BA6(RF)+6BE6(MIX)から2SK125(RF)+DBM(MIX)に置き換わったので数十dBのゲインダウンであるが、なかなかのフィーリングであった。RFアンプをもっとゲインのあるものにすると面白いかもしれない。
送信出力は50mW程度まで得られるので、807CW送信機の終段管807を直接ドライブできそうである。DDSVFO出力をオシロで観測した波形も、TS-530でモニタリングした音調も全く問題なかった。

まとめ

実際に送信機と組み合わせる場合、PICに設定するIF周波数を微調整する必要がある。高一中二受信機で使っているメカフィルの通過帯域は453-455kHzでBFOはほぼ455KHzに設定してある。私は低めのトーンが好きなので700Hzで聞いた場合、受信CWは454.3kHzに存在することになる。もしPICにIFを455KHzで設定すると相手局との送信周波数の差は700Hzとなり、これではちょっと交信は難しいことになる。この場合、IFを454.3kHzに設定して700Hzのトーンで聞けば、相手局とゼロインできることになる。
昔の真空管受信機の局発に使うのも面白いかもしれない。本機を使ってCW送信も考慮する場合、455kHzIFであれば1個のBPFで送受の周波数範囲をカバーできるが、IFがもっと高い場合、送受用のBPFを分離した方がよい。DDSの出力はスプリアスが多いので不要な帯域をなるべくカットする必要があるためである。
あとはケースに入れ、PICに設定するIF周波数を微調整すれば完成である。

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Last Updated 2/Jan/2005 by mac