DDSVFOを使ったトランシーバーの製作である。以前製作した20mTranceiverの基板と短波受信機に使ったケースを組み合わせることにした。
DDSVFOの製作過程でバラックセットではあるが、ある程度組み合わせ試験をしたので実装作業だけである。全体の構成は20mTranceiverをそのまま踏襲し、VFOがアナログからDDSに変わっただけである。
20mTranceiverで使った基板はジェネレーターとトランスバーターの2枚に分かれていたが、今回はトランスバター基板を受信RF、送信ドライブ、送信PAに切り分けた。トランスバーター基板は生のプリント基板を全面アースとしてその上に直接部品を半田付けする方法で作られているので、簡単にプリント基板を金ノコで切り分けることができる。ケースの方は既存のスイッチ類の穴をそのまま再利用することにした。ダイアル周りはDDSVFOのサブパネルがそのまま装着できるように大きくカットした。
JR1EOP岩本OMが開発されたもので、昔、流行った熊本スタンダードの現代版ということで、開発された地名から板橋スタンダードと呼ばれている。AFでほとんどの利得を稼ぎ出すようになっており、IFはFET1段だけである。送受兼用のAGCはAFにかけてあり、3段の2SK669で80dBを得ている。DBMはアナログスイッチICのHC4053を使っており、全体としてかなりユニークな設計となっている。自作仲間に基板が頒布されたが、かなり手強いもので、初心者向きではないようである。基板自体はSSB専用なので、CWはHC4053に直流印可するように改造して作り出している。
左側はCW用のキャリア周波数シフト、直流印可の外付け基板。
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板橋スタンダード回路図(jpg) 1.72MB
プリアンプは2SK241を使った簡単なものである。再利用したパネルにアンテナトリマ用の穴があったのでアンテナ側はトロイダルコアに巻いてバリコンで同調できるようにした。ドレイン側はFCZ14のコイルを使っている。
ところが、全体的にゲイン不足の感があり、邪道だが2SK125を使ったポストアンプを追加した。当然、状況によってはゲインオーバーとなるので2SK241のソース抵抗を可変してゲイン調整をしている。このプリアンプはいつか作り直すことにしたい。
DDSVFOからの入力は3dBパッドを介してデバイダーへ導かれ2分割されてRXDBMとTXDBMへ入力される。各DBMへの注入電力は約5mWである。RXDBMのIFは切り替えリレーを経由してジェネレーターへ接続される。
ジェネレーターからの信号は2SK241のTXIFAMPで増幅されTXDBMでDDSVFOと混合され、BPF、2SC945PRIAMP、2SC1973DRIVEAMPで約100mWまで増幅される。CWキーイングはPRIAMPとDRIVEAMPの電源のON-OFFで実施している。DRIVEAMP出力信号は切り替えリレーを経由して、LPF、3dBパッドを通りトランスバーター用としてパネル前面のBNC端子にも供給される。
2SC1971を使った広帯域アンプである。ステップダウン・アップはトロイダルコアを使用している。放熱器が若干小さめであるが、大きめのシャーシーで補助するようにした。アイドリング電流は約70mAで出力は5Wである。
この基板は短波受信機のトランシーバー化で使用したものを再利用した。制御項目は送受信切り替え、モード切り替え、サイドトーン、セミ・ブレークイン等である。回路はいつも使っているものでまとめた。モードがSSBの場合はPTTを押すと各リレーが瞬時に動作するが、CWモードの場合は電解コンデンサーと抵抗で構成された遅延タイマーによりセミ・ブレークインが可能となる。サイドトーンの出力はAFゲイン調整用ボリウムの入力側に接続するとAFゲインの調整で音量が調整できる。出力側に接続するとAFゲインとは無関係に一定音量となる。キーイングとリレー制御用トランジスタは必要とする電流を制御できる適当なものでOKである。
使用したジェネレーター基板はSSB専用のものを改造してCWを出せるようにした。CWはSSBモジュレーターに直流をかけて作っているがマイク入力がカットできないので、苦肉の策でマイク端子をアースに落とすことで解決した。
当初、電源は12V1Aのスイッチング電源を内蔵した。この電源は12Vだけではなく、5V出力もあり、トータルで31Wの電源容量となっていたので、12V1.5A程度はOKだろうと考えいていた。しかし、ダミーロードに喰わせてモニターするとSSBではホワイトノイズが多く、CWでは音が濁ってしまった。外部電源から供給すると全くこの現象は観察されない。結果的には電源の容量不足でCWでは定格出力時にかなりの電圧低下があったのとSSBではスイッチング電源からのノイズの影響を受けていた。
電源は内蔵したかったので、16V3AのトランスとLM317Tを使った安定化電源を組み込むことにした。今回は電圧低下も発生せず、SSB時のホワイトノイズも解消されたが、CWの音調がどうしても濁ってしまう。どうやらトランスからの磁力が影響しているようである。結局、電源内蔵はあきらめて安定化電源を別ケースに組み込んで外部電源とした。
ダミーロードの場合は全く問題なかったが、アンテナをつないでSSBで送信すると回り込みが発生してブザー状態となってしまった。もちろん音声も猛烈に歪んでいる。マイクに直列に100オームの抵抗を接続し抵抗両端を数百pFでアースに落としてみたが効果がなく、結局数千pFでようやくOKとなった。
モニターすると余り芳しい音ではない。Web検索してみるとトランスを挿入するのが回り込み対策の定番であることがわかった。ジャンク箱を探すと600:600オームのライントランスが出てきた。マイクコネクタ直近にトランスを設置して試験すると効果抜群で回り込みは解消された。
CWモードの場合、トランスの1次側をアースするようにリレーを配置してある。CWは元々SSB専用のジェネレーター基板を改造して、バラモジに直流を印可して作り出している。ジェネレーター基板のパターンが細かく、音声入力をカットするように改造できなかったので、苦肉の策で、マイク入力をアースすることで音声カットとした。
ケースに入れたせいなのか、バラック状態の時よりもスプリアスが減ったような感じがする。比較機は20数年もののトリオTS-530Sであるが、受信に関しては同程度に聞こえている。送信はローカルにチェックしてもらったが、SSB、CWとも特に問題はないようである。DDSVFOなのでさすがに周波数安定度は抜群である。外観は真空管時代の自作無線機風になってしまった。板金関係の工作スキルは昔のままで進歩がないようである。ついでにメーターもレトロなモノと交換した。
仕様
20mトランシーバー
出力 5W
モード SSB/CW
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ファイナルは2SC1971シングルであるが、これを2SC2029PPアンプに換装してみた。このアンプは2段構成のため入力感度が高いので、ついでに前段も少し手直しした。というのもローパワー出力端子の波形があまり芳しくないのである。
2SC945-2SC1973の構成を2SK241−2SK125に変更した。それに伴いファイナル入力も100mWから20mWへ減少したが、2SC2029PPアンプは入力10mWで5W出力となっているので、これでもまだ十分余裕がある。
換装後、FFTを使用したスペアナで2信号特性を計測してみたが、2SC1971シングルの場合とほぼ同じであった。もう少し何とかならないものかというレベルである。ファイナル前のローパワー端子でも同じような傾向なので、ジェネレーター周りも見直す必要がありそうである。