FFTによる波形観測ではCW波形(シングルトーン)を測定したが、今度はSSB波形の観測にチャレンジしてみる。SSB波形を観測するためには2トーン・ジェネレーターが必要となる。2トーン・ジェネレーターについてちょっと調べてみたが、まともに作ると結構大変なことがわかった。
そうであれば、もっと手軽な方法はないかというとフリーソフトのWaveSpectraの作者efuさんのサイトにパソコンのサウンド・ボードを使ったテスト信号発生ソフト WaveGeneが紹介されている。WaveGeneは多機能な信号発生器でもちろん2トーン・ジェネレーターにもなる。
さっそく、WaveSpectraをインストールしたPCにWaveGeneもインストールし、左図のようなセットアップでIMDを測定してみた。しかし、WaveGeneで発生した2トーンがSSB送信機を経由しないで直接、WaveSpectraに入り込んでしまった。使用したPCはノートパソコンでマイク・ジャックとヘットフォン・ジャックをそれぞれ、WaveSpectraの入力、WaveGeneの出力としたがジャック同士が隣り合わせに配置されていたのも漏れの一因かもしれない。
これでもIMDの様子は観測できたが、イマイチすっきりしない。
<写真1>
測定対象の無線機は15m/17m 2BAND SSB/CW Tranceiverである。赤色でマークしたのが、2トーン・ジェネレーターから直接、入り込んだスペクトラムである。これは無線機の電源を切っても残ってしまうのでよく判る。黄色でマークしたのが、無線機経由でWaveSpectraに入力された本来のスペクトラムである。赤色800Hzのすぐ左隣のスペクトラムが3次IMDだと思われるが、そうだとするとギリギリ-30dBといったところである。コンバーターで発生したと思われるその他のIMDもたくさんあってにぎやかなことである。
別々のパソコンにそれぞれWaveSpectraとWaveGeneをインストールするという手もあるが、測定環境のセットアップが面倒なので、2トーン・ジェネレーターを製作することにした。ネット検索や手持資料で2トーン・ジェネレーターの回路を探した。やはりどれもOPアンプを使い、AGCによる発振レベルの管理やLPFによる高調波対策が施されていた。穴あき基板を使い一晩ででっち上げるのにはちと荷が重い。その中でも比較的簡単と思われたCQ出版社「HFトランシーバー120%活用ガイド」に紹介されていたツー・トーン発振器を参考にして製作してみた。この発振器はOPアンプの4558を2個使用し、LO側発振器のみLFP1段を通し、HI側発振器はSSBフィルターでカットされるのでLPFなしというものである。
当初、記事の定数どおりで製作したが、発振しないので、OPアンプの-入力に接続されている15kオームの抵抗を半分程度に、またHI側が2500Hzになってしまったのでウィーン・ブリッジ回路の抵抗56kオームに22kオームを追加して発振周波数を2100Hzになるように調整した。
<写真2>
製作した2トーン・ジェネレーターを直接、パソコンのWaveSpectraへ入力して高調波を観測した。発振周波数はLO側が500Hz、HI側が2100Hzである。500Hzの第2、第3高調波は55dB以上、減衰している。2100Hzの第2高調波は40dB強、第3高調波は40dB弱となっている。これらはSSBフィルターを通ることにより、カットされる。
2トーン・ジェネレーターも準備できたのでSSBが出せる自作無線機のIMDを測定してみた。もう少しまともかとも思ったが・・・がっくりである。
<写真3>
測定対象は<写真1>と同じ15m/17m 2BAND SSB/CW Tranceiverである。この無線機にはトランスバーター用のエキサイター(約20mW)出力端子があるのでそれを測定した。下側の3次IMDは40dB近くとれているが、上側は
30dB程度しかない。
<写真4>
これは15m/17m 2BAND SSB/CW Tranceiverの5W出力の観測である。<写真3>のエキサイターよりも悪化している。ようやく30dBといったところである。この無線機のリニアアンプは2SC1971PPである。
<写真5>
測定対象はDDSVFOを使った20mトランシーバーである。この無線機もトランスバーター用のエキサイター(約20mW)出力端子があるのでそれを測定した。3次IMDはやっと20dBといったところである。
<写真6>
これはDDSVFOを使った20mトランシーバーの5W出力の観測である。リニアアンプには2SC1971をシングルエンドで使用しているが、もう少し何とかならないかと思ってしまう。15m/17m 2BAND SSB/CW Tranceiverの5Wと比べるとかなり余計なスペクトラムが観測されている。
<写真7>
上記のDDSVFOを使った20mトランシーバーに6m Transverterを接続した50MHz2W出力の観測である。リニアアンプは2SC1971をシングルエンドで使用している。ノイズ・フロア・レベルが全体的に高めでスプリアスも多い。
<写真8>
今度は電池管SSBトランシーバー送信部の50MHzSSB1Wの波形である。終段は6BQ5をA級で使用しているが、3次IMDはなんとか-30dBとれている。しかし、クリスタル・フィルターのパスバンド内でノイズ・フロアー・レベルが盛り上がっている。電池管使用のマイクアンプのS/N比が良くないと思われる。