スピーカーの鳴る単球ラジオは中波ラジオ用として製作したが、短波用コイルをプラスチックの蓋に巻いて中波用コイルと取り替えてみた。かなり適当なコイルだが、それでも7MHz帯の北京放送は受信できたが、さすがにアマチュア無線の受信まではできなかった。当初、球は3極管の76を使ったが、5極管の6K7に換え、再生回路もチックラーコイル方式からカソードタップ方式に変更したが、あまり状況は改善されなかった。
球の負荷は10kオームの出力トランスであるが、これでは負荷インピーダンスが低すぎて十分な増幅度が得られない。数百kオームの抵抗を負荷にしてもよいが、電源電圧が100Vしかないので、抵抗負荷ではプレート電圧が低くなり、これまた問題である。やはり、オーソドックスにチョーク負荷にすべきである。手持ちのオーディオ用段間トランスを調べたが、これでもインピーダンスは40kオームしかない。最低でも100H程度のチョークコイルが必要となる。
ネット検索したらラジオ少年で200H20mAのチョークコイルを販売していたので通販で購入した。ついでに100V40mA,6.3V1Aの電源トランスも購入した。
左から購入した100V40mA,6.3V1Aの電源トランスと200H20mAのチョークコイル。タイ国製でそれぞれ1,200円であった。
チョークコイルが到着したので早速、アマハン復刻版の回路を参考にしてバラックセットを製作した。単球(0-V-0)にしてクリスタルイヤフォーンで聞いてもよいが、76の低周波段を追加して0-V-1の構成にした。検波用の球はメタル管の6SJ7にした。コイルやバリコンはスピーカーの鳴る単球ラジオで使ったものである。
7MHzのハムバンドを聞いてみた。なんとかSSB、CWを復調することができたが、再生用のボリウムを調整すると受信周波数も変化してしまう。再生調整はスクリーングリッドの電圧を可変しているが、それにより発振周波数も変化することがわかった。SSBやCWを受信する場合、目的信号周波数とローカル発振周波数の差でビートを得る必要がある。そのため、再生を深くして発振状態にしないと復調できない。この回路では6SJ7が検波と発振を兼ねているので、この状態がオートダインとなる。それにしてもかなりクリチカルな操作を要求される。
ところが、夜間に7MHzのハムバンドを聞いてみたら、強力な短波放送局にマスクされてハムバンドがどこにあるかも判らない始末である。再生検波受信機を使ってのCWQSOを目論んでいるが、先は長そうである。
RF段を追加して1-V-1にすれば、すこしは良くなるだろうか。その前に、少しいたずらをしてみた。再生調整すると発振周波数が変化してしまうとしたら、外部から注入してみたらどうなるだろうか。アンテナコイルのグリッド側に1pFを接続してSGもどきから7MHzを注入してみた。SGを100HzステップにしてハムバンドをサーチするとCWやSSBが聞こえてきた。再生ボリウムは発振しない程度に調整して、同調用バリコンを回すとそこそこの選択度が得られる。もちろん、フィルターが入っていないので混信はあるが、かなり安定してCWやSSBが受信できる。
この状態では6SJ7は検波のみで、ローカル発振はSGが担当しているのでヘテロダインとなる。ヘテロダインと言うよりも他励式のダイレクト・コンバージョン受信機そのものである。そうなると6SJ7は検波と呼ぶよりも混合の方が相応しいかもしれない。SGの注入先を6SJ7のグリッドに変えてみたが、こちらの方が感度が悪くなったので元に戻した。これならばなんとかCWQSOに使えるかもしれない。
ところが、やはり夜間は鬼門であった。これまた、強力な放送局が通り抜けてしまってハムバンドをマスクしてしまう。解決策としては、中間周波数に変換してスーパーヘテロダインにすれば良いのだが、それでは再生検波受信機のイメージになじまない。
0-V-1の状態で外部から局発を注入してヘテロダインにするとそこそこ安定してCWを受信することができた。もちろん、強力な放送局があまり出ていない昼間の話ではあるが・・・そうなるとQSOしたくなる。ペアになる送信機には807を使ったCW送信機を使った。ちょうど国内コンテストの最中だったので強い局を見つけてキャリブレートをとりコールするとあっさり応答があった。その後、何局かとQSOできた。バンドは40mである。
一応QSOできたが、再生検波のおかげというよりもDDSを使ったSGのおかげであり、かなり強引な感じである。たった2球でもかなりの感度があるのには驚いたが、これをきれいに組み直して現用受信機の仲間入りさせるまでの気力はない。
とりあえず、再生検波のいたずらということでお終いにしよう。