30W トランジスタ・リニア・アンプの実験
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プロローグ

普段はQRP5Wで運用し、もう少しパワーが必要なときは811AのGGアンプで50WまでQROしている。しかし、バンドをチェンジする度にチューンを取り直す必要があり、結構、面倒である。
もう一台、リニアがあれば便利かなと思い始めた。真空管でもいたずらしたが、パワーの割には電源が大掛かりとなってしまい、イマイチである。やはりトランジスターということで30W程度を目標としたリニア・アンプの実験をしてみた。

2SC1969

ジャンク箱から取り外し品の2SC1969が2本出てきた。データシートによると この石はコレクタ損失が20Wもあり、27MHzにおいて16Wも出るようである。これをPPにして30W程度を取り出そうと目論んだ。

回路は2SC2029-2SC1969の2段増幅であるが、30Wをひねり出そうというので、出力側を伝送路タイプして、コアもダブルにしたり、大きめのモノに換えてみた。
出力にパワー計を接続し、14MHzで10mWを入力すると10Wが得られた。シメシメこれならばということで、DDSを使ったSGを接続し1MHz、2MHz、3MHzと1MHzステップで周波数をアップして5MHzで約30Wとなった。さらにアップして7MHzにしたら、急激にパワー・ダウンして5Wしか出なくなってしまった。
石をチェックしたらPPの片側が逝っていた。いろいろと調べた結果、DDSを使ったSGが原因であることが判った。SGの出力は5MHzまでは10mW程度しか出ないが、7MHzでは50mW以上にもなり、入力オーバーで片側の石が逝って片肺になったようである。未使用の2SC1969がもう1本だけあるが、さすがに再チャレンジする気にはならなかった。

2SC2528

2SC1969自体は数百円程度で通販できるが、その前に手持ちの石で再トライしてみよう。2SC2528が出てきたので、これを使ってみる。この石はPc=25W、Vcbo=120Vであるが、とりあえず、入出力にインピーダンス比4:1トランスを配置してC級シングルでデータを採ってみた。
周波数 電源電圧12V 電源電圧24V 電源電圧33V
1MHz 5.0W 10.0W 16.0W
3MHz 3.0W 8.0W 10.0W
7MHz 3.0W 7.0W 10.0W
10MHz 3.0W 6.0W 7.0W

Vcbo=120Vであるので、 電源電圧を高くしてデータを採ってみたが、33Vまで上げて7MHzで10W、ちょっとがっかりである。やはり2SC1969のような定番の石にはかなわないようである。

2SC2528PP

毒を食らわば皿までもというわけでもないが、C級プッシュプルを試してみた。電源電圧、13Vと33Vでデータを採ったが、1969PPで得られた30Wには届かなかったが、それでもシングル時の倍の20Wが得られた。

周波数 コレクタ電流 電源電圧 出力 効率
5MHz 1.6A 30V 20.0W 41.4%
7MHz 1.6A 30V 16.0W 33.1%
10MHz 1.9A 29.5V 18.0W 32.1%

周波数 コレクタ電流 電源電圧 出力 効率
3.5MHz 1.2A 13V 8.0W 50.1%
7MHz 1.5A 13V 10.0W 50.8%

2SK2847

目先を変えてFETを試してみる。手持ちのパワー用FETは、電源のリップル・フィルターに使っている2SK2847である。VDSS=900V、PD=85Wと申し分ないが、入力容量(Ciss)が2040pFもあり、その処理が大変そうである。
入力容量はゲート回路のインピーダンスを低くしてキャンセルするしかないので、スワッピング抵抗を10オームとし、インピーダンス比4:1のトランスでドライブする。念のために3dBパッドも挿入してある。
出力回路であるが、当初は単純にインピーダンス比4:1のトランスを配置しただけであるが、オシロで観測すると波形がキザキザで非常に多くの高調波が含まれていた。そのため、 ARRL EXPERIMENTAL METHODS in RF DESIGN に掲載されていた回路に変更してある。ドレインに接続されている680pFはその高調波除去に効果がある。
電源電圧は最終的には40Vまで印加してようやく、3.5MHzで目標の30Wが得られた。7MHzでは26W、10MHzでは18Wである。電源電圧をもう少し上げて50V程度にできれば、7MHzでも30Wに届きそうである。やはり入力容量が効いていてコーナー周波数が8MHzなのが痛い。スワッピング抵抗を5オームにすれば、コーナー周波数は倍の16MHzになるので、もしかすると14MHzまで使える可能性がある。このあたりは今後の課題である。
実験に使ったヒートシンクはかなり小型のモノなので、パソコンケース用ファンで強制空冷している。効率が40%台なので30数Wの発熱があり、ファンなしではとてもではないがもたない。

          
周波数 ドレイン電圧ドレイン電流 出力電力効率
7.0MHz 30.6V 1.4A 14.0W 32.7%
10.2MHz 31.6V 1.0A 10.5W 33.2%
          
周波数 ドレイン電圧ドレイン電流 出力電力効率
7.0MHz 36.5V 1.5A 22.0W 40.2%
10.2MHz 38.9V 1.2A 16W 34.3%
          
周波数 ドレイン電圧ドレイン電流 出力電力効率
3.5MHz 39.5V 1.7A 30.0W 44.7%
7.0MHz 41.5V 1.5A 26W 41.8%
10.2MHz 45.0V 1.1A 18W 36.4%

2SK1247

部品箱から2SK1247が出てきたので、これを試してみた。VDSS=500V、PD=35Wであるが、Ciss=650pFと2SK2847の1/3なので、コーナー周波数は24MHzに改善されている。供試回路は上述の2SK2847と同じである。
10MHzでも30Wが得られたので、Cissが小さくコーナー周波数が改善されたのが効いているようである。ただし、残念なことに、この2SK1247は写真の取り外し品1個しか手持ちがないがプッシュプルにすると、10MHzまでのCW用50Wアンプが実現できそうである。アイドル電流を50mA程流しているので、それでも一応B級動作となっている。           
周波数 ドレイン電圧ドレイン電流 出力電力効率
3.5MHz 43.0V 1.4A 40.0W 66.4%
7.0MHz 41.0V 1.6A 35.0W 53.0%
10.2MHz 40.0V 1.6A 30.0W 46.9%

2SK3563

通販で2SK3563を購入した。このスイッチングレギュレータ用MOS形FETはVDSS=500V、PD=35W、Ciss=550pFと前述の2SK1247とほぼ同等である。データも下記のとおりで、若干、2SK1247より劣っているが使えそうである。
          
周波数 ドレイン電圧ドレイン電流 出力電力効率
3.5MHz 12.0V 0.5A 4.5W 75.0%
7.0MHz 12.0V 0.7A 4.0W 47.6%
10.2MHz 12.0V 0.7A 3.5W 41.7%
          
周波数 ドレイン電圧ドレイン電流 出力電力効率
3.5MHz 40.5V 1.5A 30.0W 49.4%
7.0MHz 40.0V 1.6A 30.0W 46.9%
10.2MHz 40.0V 1.6A 30.0W 46.9%

実験用電源

50V程度の電圧が必要となるので、手持ちのトランスを使い実験用電源を作った。板に木ネジでパーツを止めたお手軽版である。ブリッジ整流してトータル6600uFの電解コンデンサーを接続しただけである。ただし、電解コンデンサーの耐圧が50Vしかなく、無負荷時には耐圧をオーバーしてしまっている。

エピローグ

やはり、リニアに使われる定番の石には、それなりの理由があることがよく判った。タイトルは一応、リニアとなっているが、SSBに使えるかどうかは不明である。
しかし、電源用のFETもかなり健闘している。 プッシュプルにしてローバンド用リニアというのも面白そうである。

この続きは50W FET・リニア・アンプの製作でご覧ください。

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Last Updated 9/Jul/2008 by mac