電源用FETであるIRF510 を使った6m 50W リニア・アンプを作ってみることにする。
すでにIRF510を使用したリニア・アンプは「IRF510 PP リニア・アンプの製作」で28MHzまでは実現している。
このアンプの実験過程で50MHzのデータを採ったが、ゲインは数dBで、効率も20%台程度だったか全く見込みがないわけでもない。
そんなわけで6mで50Wを目標にチャレンジしてみる。
回路構成は当然、PPとなるが6mでは入出力トランスに一工夫する必要がある。
トランスはフェライト・コアに巻くわけであるが、手持ちのFT61-50を使用する。
入力用はFT61-50を4個使用してコンペンショナル・タイプのメガネ・コアを作った。
このタイプであれば、1次側の巻数を変えることによりインピーダンス比も変化させることが可能である。
銅板を丸めてパイプを作り、プリント基板の切れ端でサイドイッチにしている。
出力側はの2つの伝送路タイプのトランスに分け、直流カット用のコンデンサーで結合する。
PP用のトランスは、バイファイラーで3ターンとし、ソーター用のトランスは1.5DVの同軸を3ターンとした。
コアはそれぞれFT61-50の2個スタックである。
回路は「IRF510 PP リニア・アンプの製作」と同じである。
ただし、ゲイン不足が予想されるので、入力SWR改善用のアッテネーターの減衰量は実験で決めたい。
入力用トランスの巻数比はとりあえず、2:1とした。
単3乾電池4本でバイアス用電源を作り、アイドリング電流は200mAとした。
実験には「電池管SSBトランシーバーの製作」
によるトランシーバーを使用したので、入力電力は1W程度となる。
最初にアッテネーターを2dBとして実験すると約8Wの出力が得られたので、入力トランスの1次側巻数の最適化を試みた。
結果は下記のとおりであるが、それによると入力トランスの1次側巻数は2 turn が最適であった。
1次側巻数 | 入力電力 | 出力電力 | 入力SWR |
1 turn | 2.0W | 4.5W | 3.5 |
2 turn | 1.8W | 9W | 2.1 |
3 turn | 1.8W | 6W | 2.1 |
次に入力SWR改善用のアッテネーターの減衰量を調整してデータを採った。
アッテネーターなしでは入力1.3Wに対して出力が14Wとなり、ゲインは10dB以上となった。
この状態で入力を増やすと30W以上の出力が得られたが、動作が不安定でちょっとの過入力でFETが飛んでしまった。
やはり、安定動作のためにはアッテネーターが必須であるが、アッテネーターの減衰量は2dBでOKのようである。
アッテネーターの減衰量 | 入力電力 | 入力SWR | ドレイン電圧 | ドレイン電流 | 出力電力 | 効率 |
0dB | 1.3W | 2.7 | 30.6V | 1.3A | 14W | 35.2% |
2dB | 2.0W | 2.0 | 30.9V | 1.2A | 10W | 27.0% |
3dB | 1.8W | 2.0 | 31.3V | 1.05A | 9.0W | 27.4% |
今度はアッテネーターを2dBとして入出力特性を計測してみた。
結果を以下に示すが、入力5Wで出力24Wとなりゲインは6.8dB(4.8倍)となった。この時の
効率は46%が確保できており、合格ラインであろうか。
入力電力 | ドレイン電圧 | ドレイン電流 | 出力電力 | 効率 |
1W | 31.8V | 0.8A | 6W | 23.6% |
2W | 31.0V | 1.2A | 10W | 26.9% |
3W | 30.3V | 1.4A | 16W | 37.8% |
4W | 29.7V | 1.6A | 20W | 42.1% |
5W | 29.0V | 1.8A | 24W | 46.0% |
下記が最終的なアンプ回路である。入力部には2dBアッテネーター装着してある。
50MHzLPFは定K型4段とした。
定電圧基板では、電源電圧からレギュレーターICを使用してリレー用やファン用の12Vを作り、さらにレギュレーターICでドロップさせてバイアス用の5Vを作る。
ファンは12V200mAなので、電源電圧30Vから降圧させると、この間の損失が3.6WにもなるのでレギュレーターICは放熱する必要がある。
降圧にスイッチング・レギュレーターを使用した方が合理的であろう。
コントロール基板では送受信切替えを行っている。FETは送信時のみバイアスがかかり、受信時はカットオフしている。
アンプ基板、定電圧基板、コントロール基板、LPFを組み合わせた構成は下記のとおりである。
ケースはタカチYM200(W200mmxH40mmxD150mm)を使った。
コントロール類は左から電源スイッチ、LED、入力端子、出力端子である。
ヒートシンクの上には冷却用の80mmのPC用ファンが設置してある。
内部は左からアンプ基板、定電圧基板、その下にコントロール基板、LPFは前面裏の側板に設置してある。
裏面は左からヒューズ・ホルダー、電源ケーブル、スタンバイ端子となっている。
最終的なデータを採るため、ドライブ用の発振器を用意した。
ベースとなったのは6mトランスバーターで、50MHz台水晶発振子を組み込んで5W程度を出力できるようにした。
左側のコネクターに接続してあるのは外付けの可変アッテネーターで、アンブのドライブ段とファイナル段の間に挿入してある。
右側は外付けの3dBアッテネーターで出力段に接続してある。
データ採りの機器構成は下記のとおりである。
入力電力 | 入力SWR | ドレイン電圧 | ドレイン電流 | 出力電力 | 効率 |
1.0W | 1.5 | 30.2V | 1.4A | 16W | 37.8% |
1.5W | 1.6 | 29.6V | 1.4A | 24W | 50.7% |
2.0W | 1.7 | 28.6V | 2.0A | 40W | 69.9% |
2.5W | 1.8 | 28.2V | 2.2A | 40W | 64.5% |
測定結果からすると2.5Wでは過大入力となっている。
2W入力で、出力40Wが得られ、その時の効率が69.9%と出来過ぎの感がある。
実験時よりも大幅な性能向上となっているが、ドライブ用アンプの出力インピーダンスが低くなったためと思われる。
ちなみに「電池管SSBトランシーバーの製作」
によるトランシーバーを接続した場合、最大10Wの出力が得られた。
当初目標の50Wは達成できなかったが、40W台はクリアーできたようである。