電池管SSBトランシーバーの製作その2
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受信部の構成

電池管SSBトランシーバーの製作では送信部を製作したが、今回はそれとペアとなる受信部を製作してみたい。これらを合わせるとトランシーバーとなる寸法である。
下記の「PLAN A」では受信部も送信部に合わせてシングル・コンバージョンの構成としてある。ただし、電池管にこだわるとRFとMIXに使用できる適当な球がない。MIXにはなんとか1R5が使えそうであるが、RFは1L4や1T4ではかなり苦しい。そうなるとFETを使いたくなるがそれでもIFは4段使わないとトータルのゲインが確保できないと思われる。
「PLAN B」ではLOを分割してコリンズ・タイプのダブル・コンバージョンとしている。この構成ではコンバーター+高1中3の組み合わせとなる。送信部には「1st LO」と「DDS VFO」をプリミックスしてシングル・コンバージョン用の局発信号を提供することになる。この構成では2nd IFと2nd MIXには1T4と1R5が使えるはずである。全体のゲインにも余裕がありそうなのでフロントエンドはFET+DBMで簡単に済ますことができそうである。

仮設ダブル・コンバージョン

上記の「PLAN B」ダブル・コンバージョンを仮設で組んでみる。15m/17m 2BAND SSB/CW Tranceiverは電池管SSBトランシーバー送信部に使用したものと同じクリスタル・フィルターを使っているので、これを受信部とVFOに転用する。32MHzの水晶を注文したので、これで50MHz-18MHzに変換するコンバーターを作り、送信用ローカルはDDS局発と32MHzをMIXする。
生基板をグランドにして各パーツを組み合わせてコントール基板を作った。15m/17m 2BAND SSB/CW Tranceiverが受信親機とVFOとなり、これに電池管SSBトランシーバー送信部を組み合わせたことになる。今まで試験用に組み合わせていたQRPトランシーバーはVXOだったので、 チューニング操作も格段に向上した。とりあえず、受信部としてはIF以降を作り、このコントロール基板と組み合わせて、上記A,Bのどちらにするか決めて行くことにする。
VFOがDDSとなったので、送信周波数が50.0-50.5MHzまで可変できるようになった。送信部リニアの2段の1T4は単同調でコイルのコア位置を50.2MHz付近で最大出力になるよう調整したが、バンドエッジでどれだけ出力が低下するか調べてみた。50.2MHz付近で2.8W、50.0MHzで1.2W、50.5MHzで1.0Wとなった。本来ならば復同調にすべきであるが、バンドエッジでの使用頻度は少ないので、単同調のままで済ますことにする。

左下が、電池管SSBトランシーバー送信部、その右にコントロール基板、親機は右上である。

ケース

ケースはラックタイプの2階建て構造である。下に受信部、上に送信部を配置する。全体の大きさはW300mm*H200mm*D200mmである。

IF-AF段

クリスタルフィルターからAFまでを製作する。RF-MIXはとりあえず、コントロール基板の2SK241+DBMを流用する。IF段には1T4を使用するが3段では不足すると思われるので、とりあえず4段分のスペースを確保した。検波はリング検波としてステップ・アップ・トランスを介して1U5-3Q4の構成である。
クリスタルフィルターとのインピーダンスマッチングのためトライダルコアでトランスを作った。段間IFTはFCZコイルを使用し単同調とした。リング検波回路用にもトライダルコアのトランスを使用した。 ゲイン調整はAGCラインにマイナス電圧を印加する方式とするが、+12Vから-12Vを得るためのボルテージ・コンバーターICが未入手なので、9V乾電池でとりあえず代用した。3Q4のバイアスもこの9V乾電池を抵抗で2分割した4.5Vを加えている。
この状態で2SK241+DBMのコンバーターを接続して50MHzを聞いてみた。一言で言えば、トータル・ゲインがかなり不足している。ローカルの強い局でもAFゲインをかなり上げないとダメである。しかし、弱い局の信号もなんとか浮かび上がっているので、全く使えないといほどのことはない。目論見ではIF4段でもそこそこの利得があるはずであったが、1T4にとって11MHz台のIF増幅はかなりきついようである。
クリスタルフィルターの設置場所を移動し、そこへ1T4をもう1段追加することはできるが、その前に2SK241のIFアンプを仮付けしてみた。アンプはクリスタルフィルターの前とコンバーターの間に挿入した。別の受信機と比較するとRF系のゲインはまだ、若干不足気味である。コンバータのMIXをDBMからFETに換えるとか、トップに2SK125GGアンプを付加すればよさそうである。
AFゲインも不足気味であるので、トランジスター1石による20倍のアンプを検波段とステップアップトランスの間に挿入してみた。これでAFゲインもなんとか足りたようである。 。
AGCは3段目の1T4から取り出し、2SK241で増幅して整流していたが、AGC電圧が不足していたので、2SK125を追加した。AGCのために半導体で増幅しているが、これだけでもIF2段となっていて、いくら電池管を使うためとはいえ本末転倒の感がある。
別の受信機で受信できる信号は、本機でも同様に受信できるようになったので、これで行けそうであるが、この結果を受けてどうするか悩ましいところである。電池管にこだわるとIFに1T4を1本追加して5段にし、AFにも1L4の3結あたりを追加する必要がある。あるいは、このままで済ませてしまうかである。または「PLAN B」のようにダブルコンバージョンにすることも考えられるが、1stIFが可変となるので同調バリコンが必要となるが、スペース的に困難である。結論としてはシングルコンバージョンで行くことにして、もう少し聞き込んでみたい。

左側写真の右から左へ1T4が4本、左奥が1U5、手前が3Q5、その右が600:60kオームのトランス、右端が2SK241アンプ、左手前はB電源用トランス、奥はDC12V電源用トランス。右側写真の左下にはバイアス用の9V乾電池がガムテープで留めてある。

VFO

VFOは秋月のDDSと32MHz水晶を組み合わせたプリ・ミックスタイプである。運用周波数を50.0-50.5MHzとしたので、DDSの発振周波数は6.7265-7.2265MHzとなり、2SK241+BPFでアンプしてある。VFO出力はリレーで切り替えて送信部へも供給する。

DDSコントローラーはJE1AHW内田OMの自作のオアシス、「CYTEC版DDS-VFOユニット(スプリット対応)」をベースに穴あき基板で作った。

DDSVFO_PICコントロール回路図 GIFファイル 13kB

フロントエンド

フロントエンドはとりあえず、2SK241-DBM-2SK241の簡単なものとした。フロントエンドは基板ごと簡単に外せるので、将来的には別のものに置き換える予定である。

電源回路

電源はDC90V、DC60V、DC12V、DC1.4Vであり、全て安定化してある

コントロール回路

送受切替信号、サイドトーン用信号は送信部から供給される。本機ではサイドトーン発振、バイアス用マイナス電源、送受切替リレー用電源を用意した。キャリア発振、VFOは本機から送信部へリレーで切替えて供給する。バイアス用のマイナス電源はボルテージ・コンバーターICを使用した。

まとめ

送信部からは送受切り換え信号とサイドトーン用のDC電源が供給される。VFOと11.272MHzキャリアは受信部から送信部へ供給している。これらにより、2つのユニットは組み合わせされてトランシーバーを構成している。 送信部の主信号ラインは真空管で構成できたが、受信部の要であるフロントエンドは半導体の構成となってしまった。しかし、半導体フロントエンドのおかげで感度も十分にとれ、出力も2.5Wを確保できたので、ローカルラグチューや移動局ねらいには使えるリグとなった。また、2階建て構造のため、真空管を使った割にはコンパクトに仕上がった。
自作の楽しみの一つに他の人が使っていないリグで運用できるという事があると思う。他の人から見ると酔狂としか言えないと思うが、電池管を使用した自作SSBトランシーバーで運用しているのは、多分、私一人だけであろう。

コントロールは下段左からPOWER、PHONE、IF_GAIN、AF_GAIN、中段はAGC、10k/A=B、SPRIT、VFO_A/B、10Hz/100Hz、MAIN_TUNE、左端のBNCコネクターは上がVFO、下がRX_ANTである。

右下が2SK241-DBM-2SK241のフロント・エンド、その左がVFO(DDS+プリミックス)、その左、筒状のものは600/60kステップ・アップ・トランスである。

IF段トランスはプリント基板にFCZ14を半田付けしたものをビスで留めてある。上部のプリント基板にはキャリア発振、サイド・トーン、バイアス用マイナス電源他が構成されている。背面のBNCコネクターはキャリア発振を送信部へ供給する。

ラックに収めた送信部(上)、受信部(下)、左端のコネクターはVFOとRX_ANT、右上のコネクターはANTである。
大きさはW300mm、H200mm、D200mmで、真空管を13本使用しているが、その内の12本が電池管なので使用本数の割には発熱は少ない。

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Last Updated 6/Mar/2007 by mac