真空管CWトランシーバーの改造
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プロローグ

真空管CWトランシーバーはIFにJA9TTT加藤OMが開発したセラミック振動子を使った『世羅多フィルタ』を使用している。このフィルターは特性が良く、素直な音調で非常に気に入っているが、CW用でも帯域が1kHz弱でコンテスト時にはちょっと辛いものがある。さらにBFOにも同じセラミック振動子を使っているが、経年変化であろうか、発振周波数がずれたようで、相手局に合わせることが困難となってきた。
ヤエス用250Hz帯域フィルターとアルト電子に特注したキャリア用水晶発振子があるのでこれに換装することを思い立った。ただし、『世羅多フィルタ』は455kHzであるが、ヤエス用250Hz帯域フィルターは3179.3kHzなので改造が必要である。
真空管CWトランシーバーはRF:6BZ6、MIX:12AT7、IF:6BA6*2、AF:12AT7の5球構成であるが、球のヒーター電力だけでもトータル9.45Wにもなり、その発熱でDDSが誤動作するのでファンで冷却している。それが気に入らないので何とかしたいと思っていたが、トランジスター化してしまうと「真空管CWトランシーバー」ではなくなってしまうので、フィラメントが1.4V50mAしかない電池管を採用してみる。

構成

電池管をフロント・エンドからAFまで使用した無線機はすでに製作しているので、今回はちょっと趣向を変えてみる。フロント・エンドはFET+DBMにしてIF以降を電池管で構成する。IF*3、AF*2の5球構成とするが、この構成ではゲインが不足するかもしれないが、その場合はAFに簡単なトランジスター・アンプを挿入しよう。

電源

オリジナルの電源に電池管用の安定化ユニットを追加すればOKであったが、発熱を少しでも少なくするために構成を変えてみた。
手持ちのトランスで100V40mAと6.3V1Aの巻線を持つのがあるので、これを電池管専用とする。 電池管は1本あたり1.4V50mAのフィラメント電力を必要とする。今回は1T4*3、1U5*1、3Q4*1なのでトータル1.4V*300mA=0.42Wとなる。これを12Vから降圧すると3.18Wの電力ロスが発生する。しかし、6.3V巻線を整流した7Vから降圧すればロスは1.68Wに抑えられる。さらにDDS関係の5V系統も12Vではなく7Vを供給すれば、この間のロスも減少する。
オリジナルでは真空管のヒーター電力だけでも9.45Wも喰っていたが、電池管では降圧ロスも含めて2.1Wで済むことになり、かなりの軽減となる。

右手前のトランスが100V40mA、6.3V1A、奥が12V0.5Aである。トランスの左に1.4V安定化ユニットがある。中央はDDSVFOで、その左にRF-MIX-FILユニットを設置する。IF-DET-AFは写真手前のスペースにサブ・パネルを立てて配置する予定である。

RF-MIX

フロント・エンドは2SK125パラのGGアンプにDBMの組み合わせとした。トップにはトロイダルコアに巻いた同調回路を設置してある。単同調なのでシャープではないが7-10MHzをカバーしている。
250Hzクリスタル・フィルターもこのユニットに組み込んである。DBMとはインピーダンス比1:4のトランスでステップ・アップしてある。

仮設セット

VFOは周波数関係の設定を変更してPICに焼き込んだので、残りはIF-DET-AFとなる。電池管で組む前に、IF-DET-AFを仮設してパフォーマンスをチェックすることにした。
実はこの250Hzフィルターは別の無線機で試験的に使用しているので、その無線機のIF-DET-AF部分を本機に仮移設してみた。IFは2SK241が1段、DBMによるDET、AFの組み合わせでAGC無しの非常にシンプルなものである。
現用トランシーバーと切り替えながら7MHzを聞いてみたが、状況によっては本機の方が良いフィーリングであり、このままでも使えそうである。さてこれからどうしようか思案のしどころである。

IF-DET

仮設セットではIFに2SK241を使っているが、これを電池管1T4に置き換えてみる。真空管は入出力が高いので、前後段とのマッチングを考慮する必要がある。前段の250Hzフィルターの出力インピーダンスは不明であるが、数百オームであろう。DETはDBMを使うと 50オームなので、最低でもインピーダンス比としては1:100以上が必要となる。 当初、フェライト系トロイダル・コアを使った非同調のトランスで何とかならないかと思い検討したが、FT50-43に40ターンでは3.2MHzでは10数kオーム程度のインピーダンスしか得られない。
やはりオーソドックスに鉄カーボニル系トロイダル・コアを使い、同調型のトランスを作ることにした。T68-2に40ターン巻き、300pFと組み合わせると3.2MHzとなるので、固定コンデンサーと70pFトリマで同調がとれるようにした。
このコイルの上に2〜4ターン巻いて2次巻線とするが、4ターンでは1:100、3ターンでは1:187、2ターンでは1:400のインピーダンス比が得られる。とりあえず、フィルター側は4ターン、DET側は2ターンとした。
2SK241と1T4の比較であるが、当たり前であるが、2SK241の方に軍配が上がる。2SK241のPGは28dBもあるが、1T4ではせいぜい10数dBといったところであろうか。

サブ・パネル

かなり無理して電池管を使っている。素直に半導体を使った方が性能の良い無線機になることは判りきっているが、当初の予定どおり、サブ・パネルにIF-DET-AFを電池管で組み上げた。
IFは1T4が3段、DETはDBMでAFは1U5-3Q4である。このままではゲイン不足になるのでDET-AFの間にトランジスタ・アンプを挿入することにする。このアンプのゲインは実際に聴いてみて調整するが、とりあえず、50倍程度とした。
AGCはIF2段目から取り出し、2SK241で増幅した後、整流してIF段の1T4のグリッドへ掛けている。1T4*3段のIFではトータル・ゲインはせいぜい40〜50dB程度なのでAGCも気休めといったところである。当然、AGCラインをアースするAGC-OFFのスイッチを設ける予定である。

エピローグ

サブ・パネルをシャーシーに装着して無線機としてまとめた。パネル面ではRF段の同調用バリコンとRFゲイン調整を外したので、そのままポッカリ穴が開いてしまったし、ネーム・タグをはがしたので、その跡もついている。一度、パネルを外して穴ふさぎをして再塗装すると見栄えがよくなるが、とりあえず、そのままである。
やはり全体的にゲイン不足なので、AF段のトランジスター・アンプは100倍に変更した。スピーカーで聴く場合は能率の高いモノを使わないと音が小さくなる。 7MHzは現用トランシーバーと比較し、10MHzはトランスバーター14MHzトランシーバーに接続して比較してみた。フィルターの帯域が250Hzと狭いので余計なノイズがカットされ、本機の方が弱い信号の了解度が高いようである。

追補

ところで本機の出力は10mWしかない。普段はCW送信機を改造した807リニアを接続して5Wまでパワーアップして運用している。これで不足の場合は更にFETリニアを接続し、40W程度を得ている。
しかし、外付けアンプを2段も接続するのは、かなり面倒である。せめて5Wまでは一つの筐体でなんとかできないかと思い始めた。そういっても本機にはこれ以上、詰め込めないので、薄型のケースにアンプを組み込んで本機とドッキングしてみることにした。
さすがに真空管と言うわけにはいかないので、トランジスター2段のアンプを計画した。 このアンプもスクラッチから作るわけではなく、ジャンク箱にあった5Wアンプの残骸を手直ししたものである。使用するバンドは30m/40mなので、前段のドライブも軽くて済むので2SC2024-2SC2078PPのラインアップとした。2SC2078のアイドリング電流もCW専用なので 2本で30mA程度に抑えてある。

追補その2

アンプ基板が出来たので、ケースに実装する。以前、製作した10mトランスバーターのケースが出てきたのでこれを再利用した。
電源は当初、ジャンクのスイッチング電源で試したが、電流容量が不足していたので、手持ちのトランスに変更した。このトランスも12V1.2Aしかなく、FETを使ったレギュレーターを挿入したら所定の電圧が得られず、整流出力をそのまま使っている。そのため、無信号時には16V、キーダウン時には12Vと電圧変動が激しい。
このアンプを本機と接続すると7MHz/10MHzで5Wが得られた。

FFT

FFTによるスペクトラム観測でCW波形をチェックしてみた。本機から出力される基の波形は問題ないが、増幅するにつれ余計なモノも増えている。

トランシーバー本体の7MHz10mW出力である。これはDDSの出力を2SC1906でアンプしてBPFを通したモノであり、余計なサイドもなく秀逸である。

上記10mWをトランジスター・アンプで増幅した5Wの波形である。かなり余計なサイド・バンドが観測できる。

上記5Wを50W FET・リニア・アンプで増幅した50W波形である。

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Last Updated 2/Oct/2008 by mac